この患者への薬物治療に関して、病棟の症例検討カンファレンスに参加している研修医向…
39 歳、閉経前女性。身長155 cm、体重43 kg、体表面積1.38 m²。右乳房に腫瘤を触知し、乳腺外科を受診、針生検の結果、T1N1M0 のStageⅡA の右乳がんと診断され、入院した。右乳房部分切除術、センチネルリンパ節生検及び腋窩リンパ節郭清を実施した。術後の検査所見は以下のとおりであった。(検査所見)リンパ節転移6 個、エストロゲン受容体(ER)陽性、プロゲステロン受容体(PgR)陽性、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2 型)陰性、AST 20 IU/L、ALT 17 IU/L、血清クレアチニン0.88 mg/dL、BUN 18 mg/dL、白血球5,600/μL、赤血球368 × 10⁴/μL、Hb 11.2 g/dL、血小板28 × 10⁴/μL、好中球4,500/μL今回この患者に以下の術後薬物療法を施行することとなった。(処方1 )A 錠20 mg 1 回1 錠(1 日1 錠)1 日1 回 朝食後 14 日分(処方2 )リュープロレリン酢酸塩注射用キット3.75 mg 1 キット1 回3.75 mg 4 週間ごとに1 回皮下注射
この患者への薬物治療に関して、病棟の症例検討カンファレンスに参加している研修医向けに発表して欲しいと病棟担当薬剤師へ依頼があった。カンファレンスにおける薬剤師の発表内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- ⑴ 処方1 の薬剤の服用により子宮体がん(子宮内膜がん)のリスクが高まることがあり、本剤投与中及び投与終了後の患者は定期的に検査を行うことが望ましい。タモキシフェンは子宮内膜にエストロゲン様作用を示すため、子宮体がんのリスクがあり定期検査が望まれます。
- ⑵ 処方2 の薬剤の投与により、うつ状態が現れることがあり、症状悪化時にはSSRI 等の抗うつ薬の追加処方を検討する。パロキセチンなどのSSRIはCYP2D6を阻害してタモキシフェンの効果を弱めるおそれがあり、安易に追加するのは不適切です。
- ⑶ 処方2 の薬剤の投与により、骨疼痛の一過性増悪がみられることがあり、このような症状が現れた場合には、ビスホスホネート製剤の投与を行う。骨疼痛の一過性増悪(フレア)は主に前立腺がんで問題となり、ビスホスホネートで対処するものではありません。
- ⑷ 今回の薬物治療に際して患者が妊娠していないことを確認し、また治療期間中は低用量経口避妊薬による避妊法を用いる。ホルモン療法中にエストロゲンを含む低用量経口避妊薬を用いるのは不適切で、非ホルモン的な避妊法を用います。
- ⑸ 今回の薬物治療により骨密度の低下がみられることがあるので、長期にわたり投与する場合は骨密度の検査を実施する。LH-RHアゴニストによるエストロゲン低下で骨密度が減少するため、長期投与時は骨密度検査を行います。
解説
正解は⑴と⑸です。タモキシフェンは子宮内膜ではエストロゲン様に働くため、子宮体がんのリスクが高まり、投与中から終了後も定期的な婦人科検査が望まれます。リュープロレリンによるエストロゲン低下は骨密度を減少させるため、長期投与では骨密度を確認します。一方、うつ状態に対しSSRIの一部はCYP2D6を阻害してタモキシフェンの活性代謝物を減らすため安易な追加は避けます。避妊にはエストロゲンを含む経口避妊薬ではなく、非ホルモン的な方法を用います。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198926.html)を加工して作成