この患者の病態及び治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
22 歳女性。身長163 cm、体重39 kg。希死念慮があり、市販薬を大量に服用した。自室でぐったりしているところを母親が発見し、救急搬送となった。部屋には、1 箱20 錠入包装の鎮痛剤(1 錠中アセトアミノフェン300 mg 含有)の空箱2 箱と40 錠分の空のPTP シートがあり、アルコール飲料の350 mL 缶が多数散乱していた。母親の話から、服用後約7 時間程度経過していることがわかった。病院到着時、バイタルサインの大きな問題はなかった。
この患者の病態及び治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ⑴ 肝細胞の脂肪変性が見られる。アセトアミノフェン中毒の肝障害は小葉中心性の肝細胞壊死が特徴で、脂肪変性ではありません。
- ⑵ アセトアミノフェンの代謝物が肝細胞を障害している。代謝物NAPQIがグルタチオン枯渇後に肝細胞のタンパク質と結合し、肝細胞を障害します。
- ⑶ 低栄養がアセトアミノフェンの毒性を増強している。低栄養ではグルタチオンが不足してNAPQIを解毒できず、アセトアミノフェンの毒性が増強します。
- ⑷ 薬用炭の経口投与が有効である。薬用炭は服用後1〜4時間以内に有効とされ、約7時間経過したこの患者では効果が期待しにくいです。
- ⑸ アドレナリンの筋注が必要である。バイタルサインに問題はなく、アナフィラキシーでもないため、アドレナリンの筋注は不要です。
解説
正解は⑵と⑶です。患者は約12 g(体重39 kgで約300 mg/kg)のアセトアミノフェンを服用しており、肝障害を起こしうる量です。過量のアセトアミノフェンはCYP2E1などで代謝されて反応性の高いNAPQIが大量にでき、グルタチオンが枯渇すると肝細胞のタンパク質と結合して小葉中心性の肝細胞壊死を起こします。低栄養ではグルタチオンが少ないため毒性が強まり、飲酒もリスクを高めます。服用から約7時間経過しているため薬用炭の効果は期待しにくく、アドレナリンの筋注も不要です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198925.html)を加工して作成