ICU 担当薬剤師の対応に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。なお…
87 歳男性。畑仕事中に意識がもうろうとなり、A病院に救急搬送された。現病歴と服用している薬剤の有無は不明であった。検査の結果、血清ナトリウム値が108 mEq/L と低ナトリウム血症を認めた。治療のため、3 %塩化ナトリウム水溶液での点滴加療を開始することにした。処方内容や投与方法など治療方針について医師からICU 担当薬剤師に確認の依頼があった。(処方)生理食塩液(500 mL/ボトル) 1 本10%塩化ナトリウム注射液(20 mL/アンプル)7.5 本(150 mL)医師コメント:末梢点滴(自然滴下、30 mL/時間)A病院の医療安全マニュアルには、生理食塩液に対する浸透圧比4 を超える注射液を投与する場合は中心静脈より投与することと記載されている。
ICU 担当薬剤師の対応に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。なお、塩化ナトリウムの式量は58.5 とし、水溶液中で完全電離しているものとする。
- ⑴ 処方どおりに調製すれば、3 %塩化ナトリウム水溶液となるため、問題なしと判断した。対応は正しいです。塩化ナトリウム19.5 gが650 mLに含まれるので、3.0%の水溶液になります。
- ⑵ 算出された浸透圧比が4 を超えていたので、中心静脈からの投与を依頼した。誤りです。浸透圧比は3.0÷0.9≒3.3で4を超えないため、中心静脈からの投与は必要ありません。
- ⑶ 低ナトリウム血症の更なる悪化は、痙れんや昏睡を起こす可能性があると情報提供した。対応は正しいです。低ナトリウム血症が悪化すると脳浮腫により痙れんや昏睡を起こすおそれがあります。
- ⑷ 急激な血清ナトリウム値の上昇は、浸透圧性脱髄症候群を起こす可能性があると情報提供した。対応は正しいです。血清ナトリウムの急激な補正は浸透圧性脱髄症候群を起こすおそれがあります。
- ⑸ 低ナトリウム血症の原因として、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)も考えられると情報提供した。対応は正しいです。高齢者の低ナトリウム血症の原因としてSIADHは考慮すべき病態です。
解説
正解は⑵です。処方の塩化ナトリウム量は、生理食塩液500 mL中に4.5 g、10%注射液150 mL中に15 gで合計19.5 g、全量は650 mLなので濃度は3.0%です。生理食塩液(0.9%)に対する浸透圧比は3.0÷0.9≒3.3で4を超えないため、マニュアル上は末梢からの投与が可能であり、中心静脈投与を依頼したとする対応は誤りです。そのほかの対応は正しく、重度の低ナトリウム血症は痙れんや昏睡を招き、急速な補正は浸透圧性脱髄症候群を起こすおそれがあり、原因としてSIADHも考えられます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198925.html)を加工して作成