55 歳男性。会社員。26 歳時に結婚し、子供が二人いる。元来まじめな性格で、会…
55 歳男性。会社員。26 歳時に結婚し、子供が二人いる。元来まじめな性格で、会社では昼夜を問わず仕事をしていた。2 年前に昇進し、一層仕事に励んでいた。今年に入り、朝早く目が覚めてその後眠れないようになった。また、便秘がちになり食欲が低下したため、近医の消化器内科を受診したが軽快しなかった。その後も体調不良が続き、これらの症状に加え、立ちくらみや耳鳴りが出現したため、内科を転々とし精査を受けたが、器質的異常は認められなかった。やがて、一日中身体の不調を自覚するようになり、業務中にミスが増えた。「こんなダメな自分と一緒にいても未来がないので離婚しよう。」と、妻に頻回に言うようになった。趣味のゴルフへの興味もなくなり、休日は家でぼんやり過ごすようになったため、心配した妻と一緒に精神科を受診し、うつ病と診断された。この患者の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ⑴ 微小妄想が認められる。「ダメな自分」と過度に自己を低く評価する訴えは、うつ病に特徴的な微小妄想(罪業妄想など)と考えられます。
- ⑵ 昏迷が生じている。昏迷は意識はあっても外界への反応や発語がほとんどない状態です。この患者は会話や受診ができており当たりません。
- ⑶ 記憶障害を伴う可能性が高い。うつ病では集中力低下はみられますが、器質的な記憶障害を伴う可能性は高くありません。認知症との区別が大切です。
- ⑷ 治療では、十分な休養が推奨される。うつ病の治療では、薬物療法とともに心身の十分な休養を確保することが基本として推奨されます。
- ⑸ 薬物療法では、初回から2 剤以上の抗うつ薬を併用する。抗うつ薬は副作用を避けるため単剤を少量から開始するのが原則で、初回から2剤以上を併用はしません。
解説
正解は⑴と⑷です。この患者は早朝覚醒、食欲低下、興味の喪失、身体症状などうつ病の典型的な症状を示しています。「こんなダメな自分」と自分を過小評価する訴えは、罪業・貧困・心気妄想などを含む微小妄想にあたります。治療では十分な休養と、抗うつ薬の単剤からの少量開始が基本です。患者は会話や受診が可能で昏迷の状態ではなく、本人が自覚する集中力低下はあっても、器質的な記憶障害を伴う可能性は高くないと考えられます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198926.html)を加工して作成