内科的治療で症状は改善したが、患者の身体活動能力は低下した。自宅療養に向けてQO…
88 歳の男性。呼吸困難を主訴に来院した。現病歴 : 1 週間前から労作時の呼吸困難が出現している。昨夜の就寝中から湿性咳嗽が出現しており、今朝から全身倦怠感が著明となり、安静にしていても症状が徐々に増悪するため受診した。既往歴 : 高血圧、脂質異常症および糖尿病で外来通院中。2 年前から腰部脊柱管狭窄症で整形外科通院中。8 年前に心房細動でカテーテルアブレーション治療。10年前には両側の手根管症候群で外科手術。生活歴 : 喫煙は20 歳から現在まで10 本/日、飲酒は機会飲酒、妻との2 人暮らし。家族歴 : 特記すべきことはない。現 症 : 意識は清明。身長158 cm、体重57 kg。体温36.8 ℃。脈拍60/分、整。血圧108/90mmHg。呼吸数20/分。SpO2 92 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認める。心音はⅠ音、Ⅱ音は正常。Ⅳ音を聴取する。呼吸音は、両下肺野で減弱しており、上肺野ではcoarse crackles を聴取する。腹部は平坦、軟で、右肋骨弓下に肝を3 cm 触知するが、脾を触知しない。四肢末梢は冷感を認める。両下腿浮腫を認める。検査所見 : 血液所見:赤血球402 万、Hb 12.1 g/dL、Ht 40 %、白血球4,500(好中球64 %、好酸球2 %、好塩基球1 %、単球8 %、リンパ球25 %)、血小板16 万、D ダイマー0.3 μg/mL(基準1.0 以下)。血液生化学所見:総蛋白7.3 g/dL、アルブミン3.6 g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 72 U/L、ALT 59 U/L、LD 185U/L(基準124~222)、ALP 323 U/L(基準38~113)、γ-GT 69 U/L(基準13~64)、CK 70 U/L(基準59~248)、尿素窒素17 mg/dL、クレアチニン1.3 mg/dL、尿酸5.9 mg/dL、血糖117 mg/dL、HbA1c 7.2 %(基準4.9~6.0)、トリグリセリド291mg/dL、HDL コレステロール40 mg/dL、LDL コレステロール118 mg/dL、Na 132 mEq/L、K 4.1 mEq/L、Cl 100 mEq/L、Ca 9.4 mg/dL、BNP 681 pg/mL(基準18.4 以下)、心筋トロポニンT 0.9 ng/mL(基準0.01 以下)。CRP 1.0mg/dL。血清免疫電気泳動でM 蛋白を認めない。動脈血ガス分析(room air):pH 7.32、PaCO2 41 Torr、PaO2 69 Torr、HCO3⁻31 mEq/L。心エコー検査では、左室収縮能は良好に保たれているが、全周性に左室壁は肥厚しており、輝度が高い。12 誘導心電図(別冊No. 9A)と胸部エックス線写真(別冊No. 9B)とを別に示す。
内科的治療で症状は改善したが、患者の身体活動能力は低下した。自宅療養に向けてQOL を改善することを目的としてリハビリテーションを行う際に適切でないのはどれか。
- ⑴ 栄養療法との併用適切です。サルコペニアの改善には栄養療法との併用が重要です。
- ⑵ 低酸素血症の確認適切です。運動時の低酸素血症の有無を確認し安全に実施します。
- ⑶ サルコペニアの評価適切です。高齢心不全患者ではサルコペニアの評価が重要です。
- ⑷ 高負荷運動処方からの開始不適切です。心不全のリハビリは低強度から開始し、段階的に負荷を上げます。
- ⑸ 体調変化による運動処方の変更適切です。体調変化に応じて運動処方を変更することが重要です。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑷です。心不全患者の心臓リハビリテーションでは、運動耐容能やQOLの改善が期待できますが、安全に配慮して低強度の運動から開始し、症状や体調の変化に応じて段階的に負荷を調整します。高齢の心不全患者ではサルコペニアやフレイルを合併しやすく、筋力の評価や栄養療法との併用が重要です。運動中の低酸素血症や不整脈、血圧の変化も確認します。高負荷の運動処方から開始することは心不全の増悪や事故の危険があり不適切です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成