下線部のうち、この病態の発症に最も関連していると考えられるリスクファクターはどれ…
68 歳の男性。発熱と腰痛を主訴に来院した。現病歴 : 1 週間前から腰痛、5 日前から38 ℃台の発熱が出現した。発熱が持続し、腰痛が増悪してきたため外来を受診した。既往歴 : 40 歳台から高血圧症で降圧薬を服用している。50 歳時に胃癌で①胃全摘、②脾臓摘出歴がある。5 年前から慢性腎不全で週に3 回③血液透析を受けている。生活歴 : 喫煙は10 本/日を40 年間。④飲酒は日本酒2 合を毎日。⑤自宅でカメを飼育している。家族歴 : 母が70 歳時に胃癌で死亡。現 症 : 意識は清明。身長160 cm、体重52 kg。体温39.6 ℃。脈拍108/分、整。血圧124/64mmHg。呼吸数24/分。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝を触知しない。腹部正中に手術痕を認める。下腿に浮腫を認めない。下位腰椎に脊椎叩打痛を認める。下肢の筋力低下は認めない。検査所見 : 血液所見:赤血球340 万、Hb 12.4 g/dL、Ht 37 %、白血球11,100(好中球88 %、好酸球1 %、好塩基球1 %、単球3 %、リンパ球7 %)、血小板23万。血液生化学所見:総蛋白5.9 g/dL、アルブミン2.6 g/dL、総ビリルビン0.4mg/dL、AST 15 U/L、ALT 11 U/L、ALP 82 U/L(基準38~113)、γ-GT 11 U/L(基準13~64)、CK 50 U/L(基準59~248)、尿素窒素40 mg/dL、クレアチニン3.7 mg/dL、尿酸2.2 mg/dL、血糖110 mg/dL、HbA1c 5.8 %(基準4.9~6.0)、Na 143 mEq/L、K 3.5 mEq/L、Cl 102 mEq/L。CRP 14 mg/dL。胸部エックス線写真で心胸郭比51 %、両側肺野に浸潤影を認めない。腰椎単純MRI の脂肪抑制T 2 強調矢状断像(別冊No. 7A)を別に示す。受診時に採取した血液培養が陽性となった。血液培養ボトル内容のGram 染色標本(別冊No. 7B)を別に示す。
下線部のうち、この病態の発症に最も関連していると考えられるリスクファクターはどれか。
- ⑴ ①胃全摘はビタミンB12欠乏などの原因ですが、化膿性脊椎炎との関連は乏しいです。
- ⑵ ②脾摘後は莢膜をもつ菌の重症感染症が問題で、黄色ブドウ球菌の脊椎炎との関連は弱いです。
- ⑶ ③透析のシャント穿刺に伴う黄色ブドウ球菌菌血症が化膿性脊椎炎の危険因子です。
- ⑷ ④飲酒は易感染性に関わりますが、本例の発症に最も関連する因子ではありません。
- ⑸ ⑤カメの飼育はサルモネラ感染症のリスクで、黄色ブドウ球菌とは関係しません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑶です。血液透析患者はシャント穿刺やカテーテルを介して皮膚常在菌である黄色ブドウ球菌の菌血症を起こしやすく、血行性に椎体へ感染が波及して化膿性脊椎炎を発症するリスクが高いです。透析患者は免疫能の低下も伴います。脾臓摘出後は肺炎球菌などの莢膜をもつ菌による重症感染症のリスクが高まりますが、黄色ブドウ球菌の脊椎炎との関連は強くありません。カメの飼育はサルモネラ感染症のリスクとなります。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成