頸部に認める所見はどれか。
84 歳の男性。呼吸困難を主訴に来院した。現病歴 : 昨日から呼吸困難があり、本日38.8 ℃の発熱もあり受診した。普段は平地を通常の速度で歩けるが、現在は室内の移動で呼吸困難がある。咳嗽も新たに出現し、喀痰は黄色である。既往歴 : 慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉を5 年前に診断されて副腎皮質ステロイド/長時間作用性β2 刺激薬/長時間作用性抗コリン薬の合剤を吸入し、高血圧症で降圧薬を内服している。生活歴 : 喫煙は20 歳から60 歳まで60 本/日、以後は禁煙している。飲酒歴はない。元会社員。現 症 : 意識は清明。身長168 cm、体重60 kg。体温38.8 ℃。脈拍132/分、整。血圧146/78mmHg。呼吸数28/分。SpO2 86 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。咽頭に発赤や白苔を認めない。心音に異常を認めない。呼吸音は両側wheezes があり、呼気が延長している。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢は浮腫を認めない。頸部の写真(別冊No. 5A)と模式図(別冊No. 5B)を別に示す。
頸部に認める所見はどれか。
- ⑴ 気管短縮肺過膨張により輪状軟骨と胸骨上切痕の距離が短くなる、COPDの所見です。
- ⑵ 甲状腺腫甲状腺は触知されず、甲状腺腫の所見はありません。
- ⑶ 正中頸囊胞正中頸嚢胞は甲状舌管の遺残による先天性の嚢胞で、本例の経過とは関係ありません。
- ⑷ 頸部蜂窩織炎頸部蜂窩織炎では発赤や腫脹、圧痛を伴いますが、記載はありません。
- ⑸ リンパ節腫大頸部リンパ節腫大を示唆する記載はありません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑴です。長期の喫煙歴があるCOPD患者では、肺の過膨張により横隔膜が低下し、気管が胸腔内へ引き下げられるため、甲状軟骨(輪状軟骨)と胸骨上切痕の距離が短縮します。これを気管短縮と呼び、COPDの身体所見の一つです。頸部の写真と模式図はこの距離の短縮を示すものと考えられます。他に呼吸補助筋(胸鎖乳突筋)の肥大、吸気時の鎖骨上窩の陥凹、口すぼめ呼吸、樽状胸郭などもみられます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成