入院翌日にバルプロ酸ナトリウムを服用するときに想定されるバルプロ酸の体内動態の変…
80 歳男性。2 日前、39.2 ℃ の発熱、悪寒、呼吸苦が認められたため、家族に連れられて救急外来を受診。意識は清明であったが、血圧は低下傾向(96/58 mmHg)、呼吸数は増加(24 回/分)しており、血液検査では CRP18.4 mg/dL 及び白血球数 15,200/μL であった。胸部 X 線では右下葉に浸潤影を認め、市中肺炎に伴う重症感染症が疑われ、即日入院となった。休日の夜間帯であり迅速な対応が求められたため、当直医は広域抗菌薬であるメロペネム水和物点滴用1 回1 g を1 日3 回、静脈内投与で開始した。入院翌日、薬剤師が持参薬を確認したところ、全般発作型てんかん治療のためバルプロ酸ナトリウム徐放錠 200 mgを服用中であることが発覚した。入院後も発作の症状はみられていない。
入院翌日にバルプロ酸ナトリウムを服用するときに想定されるバルプロ酸の体内動態の変化として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- ⑴ 消化管吸収の低下カルバペネム系はバルプロ酸の消化管吸収に影響しないため、この相互作用の主な変化ではありません。
- ⑵ 血漿タンパク結合率の低下血漿タンパク結合の置換は主な機序ではなく、カルバペネム系との相互作用では問題となりません。
- ⑶ グルクロン酸抱合体の加水分解能の低下カルバペネム系が抱合体を加水分解する酵素を阻害し、バルプロ酸の再生が減って血中濃度が低下するため正答です。
- ⑷ 水酸化体の生成能の低下水酸化などの酸化的代謝の阻害は、この相互作用の主な機序ではありません。
- ⑸ グルクロン酸抱合体の尿細管再吸収の低下抱合体の尿細管再吸収の変化は主な機序ではなく、問題の本質は抱合体の加水分解の低下です。
解説
正解は⑶です。バルプロ酸は主にグルクロン酸抱合を受け、その抱合体は肝臓などでアシルペプチドヒドロラーゼによって加水分解され、再びバルプロ酸に戻る過程を繰り返しています。メロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬はこの加水分解酵素を阻害するため、抱合体からバルプロ酸への再生が減り、バルプロ酸の血中濃度が急速かつ大きく低下します。その結果、てんかん発作が再発するおそれがあるため、両剤の併用は禁忌とされています。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198929.html)を加工して作成