薬剤師がフェノバルビタールの血清中濃度を測定したところ、65 μg/mL であっ…
25 歳女性。身長160 cm、体重55 kg。朝、自室から起床してこないため、心配に思った家族が部屋の中に入ったところ、ベッドの上で仰向けになって意識を失っていた。呼びかけに反応しなかったため、救急隊を要請した。病院搬送時の意識レベルはJapan Coma Scale(JCS)200、血圧100/55 mmHg、脈拍105 拍/分、呼吸15 回/分、体温36.0 ℃であった。採取した尿を用いて定性試験でバルビツール酸類が強陽性であった。家族からの情報によると、女性は以前よりてんかん治療のためフェノバルビタールを常用しており、たびたび体調を崩していた。胃内容物を分析したところ、フェノバルビタールが検出され、過量摂取による意識障害と診断された。
薬剤師がフェノバルビタールの血清中濃度を測定したところ、65 μg/mL であった。医師は、球形吸着炭の6 時間ごとの繰り返し投与、及び炭酸水素ナトリウム注射液の持続投与を開始した。2 日後、フェノバルビタールの血清中濃度は40 μg/mLとなり、意識は徐々に回復した。フェノバルビタールの体内動態に及ぼす球形吸着炭及び炭酸水素ナトリウムの作用として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- ⑴ 血漿タンパク結合の阻害吸着炭や炭酸水素ナトリウムは、フェノバルビタールの血漿タンパク結合を阻害する作用をもちません。
- ⑵ 肝取り込みの促進これらの薬剤は肝取り込みを促進するものではありません。排泄を促す方向に作用します。
- ⑶ 腸肝循環の抑制吸着炭の繰り返し投与により、腸管内に排泄されたフェノバルビタールが吸着され、腸肝循環が抑制されます。
- ⑷ 尿細管分泌の促進尿のアルカリ化は尿細管分泌を促すのではなく、尿細管再吸収を抑制することで排泄を増やします。
- ⑸ 尿細管再吸収の抑制尿をアルカリ化すると弱酸性のフェノバルビタールのイオン形が増え、尿細管再吸収が抑制されます。
解説
正解は⑶と⑸です。フェノバルビタールは胆汁中に排泄された後、腸管から再吸収される腸肝循環を受けます。吸着炭を繰り返し投与すると、腸管内のフェノバルビタールを吸着して再吸収を妨げ、腸肝循環を抑制して排泄を促進します。また、フェノバルビタールは弱酸性薬物(pKa約7.4)であるため、炭酸水素ナトリウムで尿をアルカリ化すると尿中でイオン形の割合が増え、尿細管での再吸収が抑制されて尿中排泄が増加します。血漿タンパク結合や肝取り込み、尿細管分泌に作用するものではありません。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198928.html)を加工して作成