ボリコナゾールのTDM 結果の解析に向けて、薬物の体内動態と血中濃度の個人差につ…
73 歳男性。体重60 kg。慢性気管支炎のため、長期治療(エンクラッセ62.5 μg エリプタ30 吸入用(注)、1 日1 回1 吸入)を実施中である。咳嗽症状が悪化し、39 ℃以上の発熱、茶色の喀痰症状があり、肺炎疑いのため、入院加療となった。最近では肺炎を繰り返しており、精査を行ったところ、末梢血好酸球増加、アスペルギルスの抗体検査及び喀痰検査陽性、レントゲン画像所見などから、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症と診断され、ボリコナゾール200 mg 静注用を投与することとなった。投与量は、ボリコナゾールとして初日は1 回6 mg/kg を1 日2 回、2 日目以降は1 回3 mg/kg を1 日2 回とした。投与開始から4 日目と8 日目に血中濃度を測定した。測定結果がわかるまでに数日を要することから、病棟カンファレンスにおいて、薬物治療に関する確認事項を共有した。(注) 1 吸入でウメクリジニウムとして62.5 μg を吸入できるドライパウダー吸入剤
ボリコナゾールのTDM 結果の解析に向けて、薬物の体内動態と血中濃度の個人差について共有しておくべき情報として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ⑴ トラフ値が目標値を超える場合は、肝機能障害に注意する。トラフ値が高いと肝機能障害の発現頻度が高まるため、目標値を超える場合は肝機能検査値に注意します。
- ⑵ ウメクリジニウムにより代謝酵素の阻害を受けるため、併用には注意が必要である。ウメクリジニウムは吸入の抗コリン薬で、ボリコナゾールの代謝酵素を阻害する相互作用は問題になりません。
- ⑶ 主となる代謝酵素は、日本人の人口の約50%がpoor metabolizer である。主な代謝酵素CYP2C19のPMは日本人で約20%であり、約50%ではありません。
- ⑷ 中等度の腎機能低下時には、注射剤中の添加剤の蓄積による腎機能悪化に注意が必要である。注射剤の添加剤スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンは腎排泄型で、腎機能低下時に蓄積するおそれがあります。
- ⑸ 2 日目以降に同じ投与量を繰り返した場合、代謝酵素の誘導を起こして血中濃度は上昇する。血中濃度が上昇するのは代謝の飽和(非線形性)によるもので、酵素誘導が起これば濃度はむしろ低下します。
解説
正解は⑴と⑷です。ボリコナゾールはトラフ値が高いと肝機能障害や視覚障害などの副作用が増えるため、目標値を超える場合は肝機能に注意します。注射剤には溶解補助剤としてスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムが含まれ、中等度以上の腎機能低下時には蓄積して腎機能を悪化させるおそれがあります。主な代謝酵素のCYP2C19のPMは日本人で約20%であり、体内動態は代謝の飽和による非線形性を示す点も共有しておく必要があります。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198926.html)を加工して作成