下図は処方1 と処方2 の薬剤投与時の、血漿中グルカゴン濃度(A)と血中グルコー…
43 歳男性。既婚で妻と二人暮らし。糖尿病治療のため、インスリンの自己注射を行っている。インスリン療法開始から1 年程度経過し、血糖値は正常値に近づいてきた。しかし、食事をとらずに注射したときや入浴中の低血糖症状による意識障害により、救急搬送を何度か経験しており、グルカゴン注射液を家族が投与できるよう3 ケ月前に処方(処方1 )された。しかし、その後重症低血糖による意識障害を起こしている本人を前にして、妻が注射液の調製を失敗してしまい、救急車を待つことしかできなかった。そこで、今後の低血糖対策として、グルカゴン点鼻粉末剤(処方2 )を使用できるよう、妻同席のもと医師による説明が実施され、薬剤部には薬剤の使用方法等について説明の依頼があった。(処方1 )グルカゴン(遺伝子組換え)注射用1 mg 1 回1 本(溶解用注射用水1 mL 添付してください)低血糖時 注射用水で溶解後に筋注 1 回分(処方2 )グルカゴン点鼻粉末剤3 mg 1 回1 個低血糖時 鼻腔内に噴霧 1 回分
下図は処方1 と処方2 の薬剤投与時の、血漿中グルカゴン濃度(A)と血中グルコース濃度(B)の時間推移をそれぞれ示したものである。次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ⑴ 処方1 で投与した場合のグルカゴンの最高血漿中濃度到達時間は30 分である。図の説明では、処方1のグルカゴン最高血漿中濃度到達時間は30分とは読み取れない推移とされています。
- ⑵ 処方1 で投与した場合の投与後60 分までの血中グルコース濃度の上昇推移は、処方2 で投与した場合とほぼ等しい。投与後60分までの血中グルコース濃度の上昇推移は、筋注と点鼻でほぼ同等に推移します。
- ⑶ 処方2 で投与した場合、グルカゴンは鼻粘膜より直接体循環に移行し、肝臓での初回通過効果を回避することができる。鼻粘膜から吸収されたグルカゴンは静脈を経て直接体循環に入るため、肝初回通過効果を回避できます。
- ⑷ 処方2 で投与する場合に処方1 の場合と同等の血中グルコース濃度上昇作用を得るためには、同用量のグルカゴンが必要である。鼻粘膜からの吸収率は筋注より低いため、点鼻では筋注の1 mgより多い3 mgが用いられます。
- ⑸ 処方2 で投与した場合、投与後30 分までの血中グルコース濃度は約70 mg/dLであり、最大血中グルコース濃度は140 mg/dL を超える値まで上昇する。図の説明では、処方2の投与後の血中グルコース濃度推移はこの記述の数値と一致しないとされています。
この問題は問題の図(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑵と⑶です。図の説明によると、点鼻投与(処方2)は筋注(処方1)より血漿中グルカゴン濃度が低めに推移しますが、投与後60分までの血中グルコース濃度の上昇はほぼ同様とされます。点鼻粉末剤では、グルカゴンが鼻粘膜から吸収されて直接体循環に入るため、肝初回通過効果を受けません。ただし鼻粘膜からの吸収率は低いため、筋注の1 mgに対し点鼻では3 mgが用いられます。図の数値に関する記述は、図から読み取れる推移と一致しないとされています。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198926.html)を加工して作成