本症例では、遺伝子変異により生じた ALK 融合遺伝子及びALK 融合タンパク質…
60 歳女性。右上葉原発性肺腺がんと診断され、右上葉切除術が施行された。その後、術後補助化学療法が施行され経過観察となった。術後4 年経過時、胸部CT 写真で右鎖骨上窩リンパ節に転移が認められ、再発と診断された。ALK 融合遺伝子陽性が確認されたため、クリゾチニブ250 mg、1 日2 回の投与による治療が開始された。投与13 日目時点でリンパ節の腫瘍は縮小傾向を認めた。各時点における主な検査値は以下のとおりである。肝機能検査値 投与前 8 日目 13 日目AST(IU/L) 30 100 350ALT(IU/L) 30 120 400ALP(IU/L) 200 600 2,000総ビリルビン(mg/dL) 1.0 1.1 1.3
本症例では、遺伝子変異により生じた ALK 融合遺伝子及びALK 融合タンパク質が検出されている。がんとこの遺伝子変異に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ⑴ この患者のがん細胞では、染色体上、ALK 遺伝子の一部分に逆位が生じている。ALK 融合遺伝子は主に2番染色体上の逆位により EML4 と ALK がつながって生じます。
- ⑵ この患者のALK 融合タンパク質では、チロシンキナーゼ活性が亢進している。ALK 融合タンパク質では、チロシンキナーゼ活性が恒常的に亢進しています。
- ⑶ この患者では、ALK 融合遺伝子が親から遺伝したと考えられる。ALK 融合遺伝子はがん細胞で後天的に生じた体細胞変異で、親から遺伝したものではありません。
- ⑷ この患者の ALK 融合遺伝子は、フィラデルフィア染色体の形成により生じる。フィラデルフィア染色体は9番と22番の転座で生じ、BCR-ABL 融合遺伝子をつくります。
- ⑸ ALK 融合遺伝子の検出にはELISA 法が用いられる。ALK 融合遺伝子の検出には FISH 法、免疫組織化学染色法、RT-PCR 法などが用いられ、ELISA 法は用いません。
解説
正解は⑴と⑵です。非小細胞肺がんの ALK 融合遺伝子は、主に2番染色体短腕の逆位によって EML4 遺伝子と ALK 遺伝子がつながって生じます。できた EML4-ALK 融合タンパク質は二量体を形成して、ALK のチロシンキナーゼが恒常的に活性化され、がん細胞の増殖を促します。この変異はがん細胞で後天的に生じた体細胞変異で、親から遺伝したものではありません。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198924.html)を加工して作成