この患者におけるバンコマイシンの治療薬物モニタリング(TDM)及び治療上の注意に…
62 歳男性。15 年前に糖尿病と診断され治療を続けてきたが、血糖値のコントロールは不十分で、下肢の潰瘍の治療目的で入院した。入院中に発熱と呼吸困難、咳を訴え、喀痰検査よりMRSA 感染症と診断され、バンコマイシン塩酸塩による治療を実施することになった。(身体所見及び検査値)体重60 kg、身長170 cm、ALT 23 IU/L、AST 18 IU/L、eGFR 24 mL/min/1.73 m²、HbA1c 9.2%(NGSP 値)
この患者におけるバンコマイシンの治療薬物モニタリング(TDM)及び治療上の注意に関する記述として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- ⑴ 血糖値が高いとバンコマイシンの血中濃度が過小評価されるので、過量投与にならないよう注意する。血糖値が高いことでバンコマイシンの血中濃度が過小評価されるという事実はありません。
- ⑵ 消失半減期が延長しているため、反復投与による血中濃度の上昇に注意する。腎機能低下で消失半減期が延長しているため、反復投与による血中濃度の蓄積に注意します。
- ⑶ 点滴終了から1 ~2 時間後にピーク濃度を測定し、最小発育阻止濃度以上の血中濃度であれば十分な治療効果が見込める。バンコマイシンのTDMはトラフ濃度やAUCを指標とし、ピークがMICを超えるだけでは効果は判断できません。
- ⑷ 1 日1 回1 g の投与を続けると、定常状態ではトラフ濃度が32 μg/mL を超えると見積もられる。一般的な母集団パラメーターで見積もると、1日1回1 gでの定常状態トラフは20〜25 μg/mL程度で、32 μg/mLを超えるとは見積もられません。
- ⑸ 下肢潰瘍に対する抗真菌薬治療を行う場合、アムホテリシンB との併用は腎障害の危険性が高まるため避けることが望ましい。アムホテリシンBは腎毒性が強く、バンコマイシンとの併用で腎障害の危険性が高まるため避けるのが望ましいです。
解説
正解は⑵と⑸です。バンコマイシンはほぼ腎排泄の薬で、この患者はeGFR 24と腎機能が低下しているため、消失半減期が延長し、反復投与で血中濃度が蓄積しやすくなります。トラフ濃度を測定して投与量や間隔を調節する必要があります。またアムホテリシンBは腎毒性が強く、併用すると腎障害の危険性が高まるため避けることが望ましいです。バンコマイシンのTDMはトラフ濃度やAUCを指標にし、血糖値が測定値をゆがめることはありません。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198923.html)を加工して作成