肺炎で入院し、セフェム系抗菌薬の点滴を受けていた80歳の女性が、治療を始めて1週…
肺炎で入院し、セフェム系抗菌薬の点滴を受けていた80歳の女性が、治療を始めて1週間後から1日に何回も水様の下痢をするようになった。便の検査で、芽胞をつくる嫌気性菌の毒素が陽性であった。この病態の説明として、正しいのはどれか。
- ⑴ 抗菌薬で腸内細菌叢が乱れて特定の菌が増え、その菌がつくる毒素によって大腸に炎症が起きている。クロストリディオイデス・ディフィシルが菌交代で増殖し、毒素で大腸炎を起こしています。
- ⑵ 食品の中で増えた菌がつくった耐熱性の毒素を食べてしまい、数時間で激しい嘔吐が起きている。食品中の毒素で数時間後に嘔吐するのは黄色ブドウ球菌などの毒素型食中毒です。
- ⑶ 加熱が不十分な鶏肉から感染した菌が数日後に腸炎を起こし、まれに神経の障害を後に伴っている。鶏肉から感染して神経障害を伴うことがあるのはカンピロバクターで、芽胞はつくりません。
- ⑷ 汚染された魚介類から感染した好塩性の菌が小腸で増え、腹痛を伴う急性の腸炎を起こしている。魚介類から感染する好塩性の菌は腸炎ビブリオで、入院中の抗菌薬投与とは関係が薄い病態です。
- ⑸ 牛肉などから感染した大腸菌のつくる毒素が腸管から吸収され、溶血と急性腎障害を伴っている。毒素による溶血と腎障害は腸管出血性大腸菌の合併症で、芽胞をつくる菌ではありません。
解説
正解は⑴です。抗菌薬の投与で腸内の常在菌が減ると、抗菌薬に耐性で芽胞をつくる嫌気性菌のクロストリディオイデス・ディフィシルが増殖し、毒素を産生して大腸炎を起こします。高齢者や入院患者に多く、重症になると偽膜性大腸炎を起こします。治療では原因の抗菌薬を可能なら中止し、バンコマイシンの経口投与やフィダキソマイシンなどを用います。芽胞はアルコールで消毒されにくいため、流水と石けんによる手洗いが感染対策の基本です。
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