69 歳の女性。悪心を主訴に来院した。悪心は3 日前から時々自覚していた。既往歴…
69 歳の女性。悪心を主訴に来院した。悪心は3 日前から時々自覚していた。既往歴に高血圧症と糖尿病があり、いずれも内服治療中である。慢性腎不全のため5年前に生体腎移植を受け、免疫抑制薬を投与されている。喫煙歴はない。意識レベルはJCSⅠ-1。身長150 cm、体重41 kg。神経診察で異常を認めない。血液所見:赤血球400 万、Hb 12.3 g/dL、Ht 41 %、白血球6,500、血小板18 万。血液生化学所見:総蛋白6.9 g/dL、アルブミン4.4 g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST22 U/L、ALT 10 U/L、LD 237 U/L(基準124~222)、尿素窒素19 mg/dL、クレアチニン0.9 mg/dL、血糖118 mg/dL、HbA1c 6.2 %(基準4.9~6.0)、Na 140mEq/L、K 4.7 mEq/L、Cl 107 mEq/L、CEA 2.9 ng/mL(基準5 以下)、CA19-92 U/mL 未満(基準37 以下)、ProGRP 80 pg/mL(基準81 以下)。免疫血清学所見:可溶性IL-2 受容体685 U/mL(基準157~474)、CRP 0.1 mg/dL。頭部造影MRIのT 1 強調像(別冊No. 1A)と頭部単純MRI のFLAIR 像(別冊No. 1B)とを別に示す。胸腹部造影CT で異常を認めない。画像所見をもとに病変の生検術を施行した。生検H-E 染色標本(別冊No. 1C)を別に示す。生検組織内にて増殖を認める細胞は、抗CD 20 抗体を用いた免疫染色にてB 細胞の表面抗原が陽性であった。診断はどれか。
- ⑴ 膠芽腫膠芽腫はグリア由来の腫瘍で、CD20陽性のB細胞の増殖はみられません。
- ⑵ 脳膿瘍脳膿瘍では炎症細胞の浸潤と壊死がみられ、B細胞の腫瘍性増殖ではありません。
- ⑶ 悪性リンパ腫CD20陽性のB細胞の増殖と免疫抑制状態から中枢神経系悪性リンパ腫です。
- ⑷ 多発性硬化症多発性硬化症は脱髄疾患で、B細胞の腫瘍性増殖はみられません。
- ⑸ 転移性脳腫瘍腫瘍マーカーは正常で胸腹部に病変がなく、B細胞の増殖は転移性脳腫瘍と合いません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑶です。腎移植後に免疫抑制薬を使用している患者で、可溶性IL-2受容体が上昇し、脳に造影効果を伴う病変があり、生検で増殖する細胞がCD20陽性のB細胞であることから、中枢神経系の悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)と考えられます。移植後の免疫抑制下ではEBウイルス関連の移植後リンパ増殖性疾患として発症することがあります。治療は高用量メトトレキサートを中心とした化学療法と免疫抑制薬の減量です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成