来院時の神経診察所見から考えられる病巣部位はどれか。
28 歳の女性。右下肢の脱力を主訴に来院した。現病歴 : 8 年前に左眼がかすんで見えたが、自然に軽快した。7 日前に右下肢の脱力を自覚した。5 日前から、お風呂に入ったとき、お湯の温かさを左下肢で感じなくなった。2 日前から、走れなくなったため受診した。既往歴 : 特記すべきことはない。生活歴 : 職業は看護師。夫と2 人暮らし。喫煙は10 本/日を8 年間。飲酒歴はない。家族歴 : 母が橋本病。現 症 : 意識は清明。身長162 cm、体重52 kg。体温36.6 ℃。脈拍84/分、整。血圧110/62mmHg。呼吸数16/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。皮疹を認めない。視力は右0.6(1.0 × -1.5 D)、左0.8(1.2 × -1.0 D)。視野に異常を認めない。瞳孔径と眼裂に左右差はなく、眼球陥凹を認めない。他の脳神経も異常を認めない。四肢筋力は、両上肢と左下肢は正常、右下肢は徒手筋力テストで3 ~4 の筋力低下を認める。腱反射は右下肢で亢進し、右Babinski 徴候が陽性である。鼻指鼻試験、手回内・回外試験で異常を認めない。左下肢で温痛覚が低下しているが、振動覚、関節位置覚に異常を認めない。右下肢で振動覚、関節位置覚が低下しているが、温痛覚に異常を認めない。両上肢では感覚に異常を認めない。排尿と排便に異常を認めない。検査所見 : 血液所見:赤血球460 万、Hb 12.2 g/dL、Ht 40 %、白血球5,300、血小板23 万。血液生化学所見:総蛋白7.0 g/dL、アルブミン4.2 g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 21 U/L、ALT 17 U/L、LD 145 U/L(基準124~222)、尿素窒素13 mg/dL、クレアチニン0.7 mg/dL、血糖90 mg/dL、HbA1c 5.3 %(基準4.9~6.0)、Na 140 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 102 mEq/L。免疫血清学所見:CRP 0.1 mg/dL、MPO-ANCA 2.0 U/mL(基準3.5 未満)、PR 3-ANCA 1.0U/mL(基準3.5 未満)、抗アクアポリン4 抗体 陰性。脳脊髄液所見:初圧90 mmH2O(基準70~170)、細胞数1 /mm³(基準0 ~2 )(すべて単核球)、糖(定量)60 mg/dL(基準50~75)、蛋白(定量)62 mg/dL(基準15~45)。
来院時の神経診察所見から考えられる病巣部位はどれか。
- ⑴ 小脳虫部小脳虫部の障害では体幹失調を来しますが、本例の錐体路・感覚障害は説明できません。
- ⑵ 延髄(左外側)左延髄外側症候群では左顔面と右半身の温痛覚障害などを来し、本例と合いません。
- ⑶ 延髄(右外側)右延髄外側症候群では脳神経症状を伴い、錐体路障害は通常伴いません。
- ⑷ 脊髄(左半側)左半側の障害では左下肢の麻痺と右下肢の温痛覚障害となり、本例と逆です。
- ⑸ 脊髄(右半側)右の錐体路・後索と左の温痛覚の障害から、右脊髄半側の病変です。
解説
正解は⑸です。右下肢の筋力低下と腱反射亢進・Babinski徴候(右錐体路障害)、右下肢の振動覚・関節位置覚の低下(右後索障害)、左下肢の温痛覚低下(交差する右脊髄視床路の障害)を示しています。上肢や脳神経に異常はないことから、胸髄レベルの右半側の障害によるBrown-Séquard症候群と考えられます。脊髄視床路は入力後すぐに対側へ交差して上行するため、温痛覚障害は病変と反対側に出現します。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成