下線部のうち、この患者の手術で医療従事者が最も留意すべき情報はどれか。
60 歳の男性。肺癌で2 週間後に右上葉切除術を予定されており、術前診察のために来院した。現病歴 : 会社の定期健診で胸部エックス線写真の異常陰影を指摘され、精査の結果、手術予定となった。既往歴 : 40 歳時に①胆囊摘出術を受けた。子供のころ、②キウイを食べて膨疹がでたので、それ以来、食べないようにしている。③インフルエンザワクチンを1か月前に接種した。生活歴 : 喫煙は20 本/日を40 年間。会社の宴会などで飲酒の機会はあるが、自宅では週末に日本酒1 合程度の晩酌のみ。自宅から駅まで15 分程度、毎日歩いている。週末は散歩と軽い運動をしている。④趣味で熱帯魚を飼っている。外食などがなければ、午後10 時には就寝し、午前6 時に起床する。食事に好き嫌いはなく、間食もあまりしない。手術前で緊張のためか⑤ここ数日、食欲がない。家族歴 : 母親は90 歳で健在。大腸癌の手術歴がある。現 症 : 意識は清明。身長166 cm、体重58 kg。体温36.6 ℃。脈拍80/分、整。血圧140/80mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98 %(room air)。皮膚は湿潤。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。開口は2 横指。口腔内は湿潤。咽頭に異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、手術痕を認める。肝・脾を触知しない。腸雑音を聴取する。下肢に浮腫を認めない。神経診察で異常を認めない。検査所見 : 血液所見:赤血球468 万、Hb 13.9 g/dL、Ht 42 %、白血球7,300、血小板21 万、PT-INR 1.0(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白7.6 g/dL、アルブミン4.0 g/dL、AST 30 U/L、ALT 20 U/L、尿素窒素12 mg/dL、クレアチニン0.6 mg/dL、血糖98 mg/dL、HbA1c 6.0 %(基準4.9~6.0)、総コレステロール204 mg/dL、HDL コレステロール50 mg/dL、LDL コレステロール115mg/dL、Na 131 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 97 mEq/L、Ca 9 mg/dL。
下線部のうち、この患者の手術で医療従事者が最も留意すべき情報はどれか。
- ⑴ ①胆嚢摘出術の既往は、今回の肺切除術で特に留意すべき情報ではありません。
- ⑵ ②キウイアレルギーはラテックスと交差反応し、手術でのアナフィラキシーに留意が必要です。
- ⑶ ③1か月前のインフルエンザワクチン接種は手術に影響しません。
- ⑷ ④熱帯魚の飼育は手術において特に留意すべき情報ではありません。
- ⑸ ⑤緊張による一時的な食欲低下は、手術で最も留意すべき情報ではありません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑵です。キウイなどの果物を食べて膨疹が出た既往は、ラテックスと交差反応を示すラテックス-フルーツ症候群の可能性を示唆します。手術ではラテックス製の手袋やカテーテルなど多数の医療器具に接触するため、ラテックスアレルギーによるアナフィラキシーを防ぐ準備が必要です。キウイ、バナナ、アボカド、クリなどはラテックスとの交差反応が知られています。術前の問診でアレルギー歴を確認し、ラテックスフリーの環境を整えます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成