この患者の入院が決定し、救急外来から病棟へ入室した。担当研修医が患者のネームバン…
15 歳の男子。顔面の痛みを主訴に救急車で搬入された。現病歴 : 野球の試合中に打球が左眼周囲に当たり、顔面の痛みを訴えた。受傷時の意識消失はなく、受傷前後の記憶障害もない。既往歴 : 特記すべきことはない。生活歴 : 特記すべきことはない。家族歴 : 父親に高血圧症。現 症 : 意識は清明。身長166 cm、体重45 kg。体温36.8 ℃。心拍数96/分、整。血圧102/60mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98 %(room air)。眼位は正中で瞳孔不同もないが複視を認める。左眼の眼球運動で上転障害を認めた。眼周囲に擦過傷を認めるが明らかな活動性の出血を認めない。鼻の変形と鼻出血は認めない。開口障害と咬合異常は認めない。左眼周囲の感覚の低下を認めるが、その他の神経学的所見に異常は認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。明らかな四肢麻痺を認めない。検査所見 : 血液所見:赤血球460 万、Hb 14.6 g/dL、Ht 42 %、白血球6,800、血小板28 万。血液生化学所見:総蛋白6.0 g/dL、アルブミン3.4 g/dL、総ビリルビン0.5 mg/dL、AST 21 U/L、ALT 11 U/L、LD 225 U/L(基準124~222)、CK 120 U/L(基準59~248)、尿素窒素10 mg/dL、クレアチニン1.0 mg/dL、尿酸6.3 mg/dL、血糖98 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 106 mEq/L。CRP 0.9 mg/dL。
この患者の入院が決定し、救急外来から病棟へ入室した。担当研修医が患者のネームバンドを確認したところ名前が異なっていた。状況を指導医に報告しネームバンドを正しいものに変更した。次にとるべき対応はどれか。
- ⑴ 保健所に報告する。本事例は保健所への報告の対象ではありません。
- ⑵ 特に対応は必要ない。患者誤認につながる重大なインシデントであり、対応は必要です。
- ⑶ 医療事故調査を依頼する。医療事故調査制度は予期せぬ死亡・死産が対象で、本事例は該当しません。
- ⑷ インシデントレポートを提出する。実害のないインシデントとしてレポートを提出し、再発防止に役立てます。
- ⑸ ソーシャル・メディアに投稿する。患者情報をソーシャル・メディアに投稿するのは守秘義務違反です。
解説
正解は⑷です。患者に誤ったネームバンドが付けられていた事例は、患者誤認による重大な医療事故につながりうる事象であり、実害が生じる前に発見されたインシデント(ヒヤリ・ハット)に該当します。発見者はインシデントレポートを提出し、原因を分析して再発防止策に役立てることが重要です。レポートは個人の責任追及ではなく、組織としての医療安全向上を目的とします。医療事故調査制度は予期しない死亡・死産が対象です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成