75 歳の男性。突然の左下肢の痛みとしびれを主訴に来院した。健康診断で心房細動を…
75 歳の男性。突然の左下肢の痛みとしびれを主訴に来院した。健康診断で心房細動を指摘されたが医療機関を受診していなかった。意識は清明。脈拍104/分、不整。血圧152/84mmHg。呼吸数16/分。SpO2 95 %(room air)。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。左鼠径部、左足背で動脈を触知しない。左下肢に冷感およびチアノーゼを認める。血液所見:赤血球442 万、Hb 14.0 g/dL、Ht 41 %、白血球4,400、血小板26 万、D ダイマー8.7 μg/mL(基準1.0 以下)。FDP 8.0 μg/mL(基準10 以下)。血液生化学所見:AST 62 U/L、ALT 34 U/L、LD 254 U/L(基準124~222)、CK 480 U/L(基準59~248)、尿素窒素22 mg/dL、クレアチニン1.0 mg/dL、BNP 134 pg/mL(基準18.4 以下)。12 誘導心電図で心房細動を認める。骨盤動脈のディジタルサブトラクション血管造影〈DSA〉像(別冊No. 21)を別に示す。この患者の治療で適切でないのはどれか。
- ⑴ 血栓回収術血栓回収術で動脈内の塞栓子を除去し、血流を再開させるのは適切な治療です。
- ⑵ 血栓溶解療法血栓溶解療法は病態に応じて血流再開のために選択される治療です。
- ⑶ ヘパリンの持続静注ヘパリンの持続静注で血栓の進展を防ぐのは急性動脈閉塞の初期治療として適切です。
- ⑷ 下大静脈フィルター留置術下大静脈フィルターは静脈血栓による肺塞栓症の予防に用いるもので、動脈塞栓症には適切ではありません。
- ⑸ 直接経口抗凝固薬〈DOAC〉内服心房細動による塞栓症の再発予防として、DOACによる抗凝固療法は適切です。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑷です。未治療の心房細動がある患者に、突然の左下肢の疼痛、しびれ、冷感、チアノーゼ、動脈拍動の消失を認め、心原性塞栓による急性下肢動脈閉塞症と考えられます。治療は直ちにヘパリンを持続静注し、カテーテルによる血栓回収術(Fogartyカテーテルなど)や血栓溶解療法で血流を再開させ、再発予防にはDOACなどの抗凝固療法を続けます。下大静脈フィルターは深部静脈血栓症による肺塞栓症を防ぐための処置で、動脈塞栓には無効です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成