本治療には、腫瘍抗原に対する T 細胞の免疫応答と、この免疫応答を調節するための…
72 歳女性。嗄声が継続していたため近医を受診した。胸部 X 線検査で右肺腫瘤を指摘され、総合病院呼吸器内科を紹介受診した。精査の結果、cT2N3M1b、Stage ⅣA の非小細胞肺がん(腺がん)と診断された。パフォーマンスステータス(PS)0 。EGFR 遺伝子変異陰性、ALK 遺伝子転座陰性、ROS1 遺伝子転座陰性、BRAF 遺伝子変異陰性、PD-L1 ≧ 50%。一次治療としてペムブロリズマブが投与されることになった。
本治療には、腫瘍抗原に対する T 細胞の免疫応答と、この免疫応答を調節するための免疫チェックポイントの機能が関わっている。T 細胞の免疫応答に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ⑴ 樹状細胞は、ヘルパー T 細胞に腫瘍抗原などの抗原を提示する。樹状細胞は代表的な抗原提示細胞で、腫瘍抗原などをヘルパーT細胞に提示するため正しい記述です。
- ⑵ T 細胞のうち、腫瘍抗原に対する免疫応答を増強する細胞を制御性 T 細胞とよぶ。制御性T細胞は免疫応答を抑制する細胞であり、腫瘍抗原に対する免疫応答を増強する細胞ではありません。
- ⑶ 抗原提示細胞の CD80/CD86 は、細胞傷害性 T リンパ球抗原-4(CTLA-4)と結合することによりキラー T 細胞の活性化に必要な補助刺激シグナルを伝える。CD80/CD86がCTLA-4と結合すると抑制性シグナルが伝わります。活性化の補助刺激はCD28との結合によります。
- ⑷ がん細胞の PD-L1 は、CD28 と結合することによりキラー T 細胞の活性化に必要な補助刺激シグナルを伝える。PD-L1が結合するのはPD-1で、抑制性シグナルを伝えます。CD28と結合して補助刺激を伝えるわけではありません。
- ⑸ がん細胞の PD-L1 は、PD-1 と結合することによりキラー T 細胞に抑制性のシグナルを伝えて免疫応答を抑える。PD-L1がPD-1に結合するとキラーT細胞に抑制性シグナルが伝わり免疫応答が抑えられるため、正しい記述です。
解説
正解は⑴と⑸です。樹状細胞は代表的な抗原提示細胞で、取り込んだ腫瘍抗原などをMHCクラスⅡ分子に載せてヘルパーT細胞に提示します。T細胞の活性化には抗原刺激に加え、CD80/CD86とCD28の結合による補助刺激が必要です。一方、CTLA-4やPD-1は抑制性の受容体で、がん細胞のPD-L1がPD-1に結合するとキラーT細胞の働きが抑えられます。ペムブロリズマブは抗PD-1抗体としてこの抑制を解除し、抗腫瘍免疫を回復させます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198929.html)を加工して作成