ニトログリセリン注射液投与時にPVC 製のチューブを使うと、ニトログリセリンがチ…
80 歳女性。身長160 cm、体重50 kg。胸の痛み及び息苦しさの訴えにより救急搬送された。急性心不全の診断にてニトログリセリン注射液を投与することとなった。診療録には「ニトログリセリン注射液は 0.05 μg/kg/分より開始して様ア子をみていく」と記載されている。なお、添付文書には、「0.05~0.1 μg/kg/分の速度より開始して血圧等の循環動態をモニターしながら適宜増量し、最適点滴速度で維持する」とある。また、この注射液はポリブタジエン製輸液チューブ(PVC(注)フリー)の点滴ルートでシリンジポンプにより投与するものとする。(注:ポリ塩化ビニル)(処方)ニトログリセリン注射液25 mg/50 mL 1 本医師コメント:末梢点滴(精密持続点滴)
ニトログリセリン注射液投与時にPVC 製のチューブを使うと、ニトログリセリンがチューブに吸着し、静脈内への到達量が著しく減少することが知られている。この吸着に関連すると考えられる分子間相互作用はどれか。1つ選べ。
- ⑴ 水素結合ニトログリセリンは水素結合の供与基をもたず、PVCへの吸着の主因は水素結合ではありません。
- ⑵ 電荷移動相互作用電荷移動相互作用は電子供与体と受容体の間の相互作用で、この吸着の主因ではありません。
- ⑶ 静電的相互作用ニトログリセリンは電荷をもたない分子のため、静電的相互作用は主な要因ではありません。
- ⑷ 分散力脂溶性のニトログリセリンは分散力による疎水的な相互作用でPVCや可塑剤に吸着します。
- ⑸ イオン-双極子相互作用ニトログリセリンはイオンではないため、イオン-双極子相互作用は主な要因ではありません。
解説
正解は⑷です。ニトログリセリンは分子量が小さく、極性の低い硝酸エステルで脂溶性が高い分子です。ポリ塩化ビニル製のチューブには可塑剤が含まれ、ニトログリセリンはこの可塑剤やポリマーに疎水的な相互作用、すなわち分散力(ファンデルワールス力)によって吸着・収着し、投与量が大きく減少します。このためポリブタジエン製などのPVCフリーのチューブを用います。ニトログリセリンはイオンではないため、静電的相互作用やイオン-双極子相互作用は主な要因ではないと考えられます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198925.html)を加工して作成