この患者の中毒原因となった物質に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ…
44 歳男性。高速道路などの橋梁塗装作業に従事している。6 ヶ月に一度の特殊健康診断時に、自覚症状として、全身倦怠感、食欲不振、腹痛やめまいなどを申告した。その後、血液検査結果から産業医が有害物質による中毒と診断し、医療機関での診察を勧めた。尿中 δ-アミノレブリン酸濃度5.5 mg/L血液検査: 赤血球数420 × 10⁴/μL、白血球数4,700/μL血小板数27 × 10⁴/μLHb 10.2 g/dL、Ht 36%
この患者の中毒原因となった物質に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- ⑴ 末梢神経障害の原因となる。鉛は橈骨神経麻痺による垂れ手などの末梢神経障害を起こすので、正しい記述です。
- ⑵ δ-アミノレブリン酸脱水酵素を阻害する。鉛はδ-アミノレブリン酸脱水酵素を阻害し、尿中δ-アミノレブリン酸を増加させるので、正しい記述です。
- ⑶ 体内でメチル化されて、有害作用を示す。鉛は体内でメチル化されて毒性を示すわけではないので、誤りです。メチル化が知られるのはヒ素や水銀です。
- ⑷ Fe³⁺ のFe²⁺ への還元反応を阻害して、フェロキラターゼを抑制する。鉛は鉄の還元を妨げてフェロキラターゼによるヘムの生成を抑制するとされ、正しい記述です。
- ⑸ 尿中のコプロポルフィリンを増加させる。鉛はヘム合成を阻害して尿中コプロポルフィリンを増加させるので、正しい記述です。
解説
正解は⑶です。鉛は無機鉛のまま有害作用を示し、体内でメチル化されて毒性を発揮するわけではありません。体内でメチル化される重金属としてはヒ素や水銀が知られています。鉛はヘム合成系のδ-アミノレブリン酸脱水酵素とフェロキラターゼを阻害するため、尿中のδ-アミノレブリン酸やコプロポルフィリンが増加し、貧血を起こします。末梢神経障害(伸筋麻痺による垂れ手)も鉛中毒の特徴的な症状です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198923.html)を加工して作成