工業用アルコールを誤って飲んだ男性が、十数時間後から視力の低下と代謝性アシドーシ…
工業用アルコールを誤って飲んだ男性が、十数時間後から視力の低下と代謝性アシドーシスを示した。メタノールの摂取が疑われた。視力の障害が起こる主な理由として、正しいのはどれか。
- ⑴ 代謝されて生じたシュウ酸がカルシウムと結合し、視神経の周囲に結晶として沈着するため。シュウ酸を生じて結晶をつくるのはエチレングリコールの中毒で、主に腎臓が障害されます。
- ⑵ グルクロン酸抱合を受けた代謝物が水に溶けにくく、網膜の血管に詰まって血流を妨げるため。グルクロン酸抱合体は水溶性が高まって排泄されやすくなり、血管に詰まることはありません。
- ⑶ アルコール脱水素酵素などで代謝されて生じたギ酸が体内に蓄積し、視神経が障害されるため。メタノールはホルムアルデヒドを経てギ酸になり、ギ酸が網膜や視神経を障害します。
- ⑷ 未変化体がコリンエステラーゼを阻害し、瞳孔の括約筋にアセチルコリンが蓄積するため。コリンエステラーゼの阻害は有機リン系農薬などの作用で、縮瞳を起こしますが視神経の障害とは異なります。
- ⑸ 肝臓のシトクロムP450で代謝されて生じたトリクロロ酢酸が、網膜の細胞を障害するため。トリクロロ酢酸はトリクロロエチレンの代謝物で、メタノールからは生じません。
解説
正解は⑶です。メタノールはアルコール脱水素酵素でホルムアルデヒドに、さらにアルデヒド脱水素酵素でギ酸に代謝されます。ギ酸は代謝が遅いため体内に蓄積し、ミトコンドリアの呼吸を妨げて網膜や視神経を障害するとともに、代謝性アシドーシスを引き起こします。代謝に時間がかかるため、症状は摂取から半日ほど遅れて現れることが多いのが特徴です。治療にはアルコール脱水素酵素を阻害するホメピゾールなどが用いられます。
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