尿糖陽性の原因はどれか。
65 歳の女性。全身倦怠感と息切れを主訴に来院した。現病歴 : IgA 腎症による慢性腎臓病と高血圧症で通院していたが、約3 か月前から仕事(週5 日のデスクワーク)が多忙であり、受診が中断していた。最終受診時に今後の腎代替療法について相談した結果、必要時には腹膜透析を導入し、将来的には夫からの腎移植も考慮することとなっていた。アンジオテンシン受容体拮抗薬とSGLT 2 阻害薬が処方されており、アンジオテンシン受容体拮抗薬の残薬はなくなったが、SGLT 2 阻害薬は残薬を規則正しく服用していた。1 か月前から軽い全身倦怠感があり、同時期から自宅の2 階まで上がると、軽度の息切れを自覚した。倦怠感と息切れが次第に悪化したため、救急外来を受診した。既往歴 : 45 歳時に腎生検でIgA 腎症と診断され、同時期に高血圧症も指摘された。家族歴 : 両親が高血圧症で、父親が糖尿病で治療中である。現 症 : 意識は清明。身長160 cm、体重55 kg。体温36.0 ℃。脈拍72/分、整。血圧186/80mmHg。呼吸数16/分。SpO2 97 %(room air)。頸静脈の怒張は認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部に異常はない。両側下腿に圧痕性浮腫を認める。検査所見 : 尿所見(食後2 時間):蛋白2 +、糖4 +、潜血2 +、尿蛋白/Cr 比0.45 g/gCr(基準0.15 未満)、沈渣に赤血球5 ~10/HPF、白血球0 ~1 /HPF、円柱はない。血液所見:赤血球272 万、Hb 7.5 g/dL、Ht 25 %、白血球5,200、血小板17 万。血液生化学所見:総蛋白6.2 g/dL、アルブミン3.7 g/dL、AST 15 U/L、ALT 8 U/L、尿素窒素70 mg/dL、クレアチニン5.0 mg/dL、eGFR 7.4 mL/分/1.73 m²、血糖(食後2 時間)110 mg/dL、HbA1c 5.4 %(基準4.9~6.0)、Na 139mEq/L、K 5.3 mEq/L、Cl 110 mEq/L、Ca 8.2 mg/dL、P 5.2 mg/dL。胸部エックス線写真に異常はない。
尿糖陽性の原因はどれか。
- ⑴ 薬剤SGLT2阻害薬が腎でのグルコース再吸収を阻害し、尿糖陽性となります。
- ⑵ 糖尿病HbA1cと血糖は正常で、糖尿病による尿糖ではありません。
- ⑶ 血圧高値血圧高値は尿糖の原因にはなりません。
- ⑷ 採血直前の食事食後でも血糖は正常範囲で、食事が尿糖陽性の原因ではありません。
- ⑸ 尿潜血による偽陽性尿潜血は尿糖の偽陽性の原因にはなりません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑴です。HbA1cは5.4%で食後2時間の血糖も110mg/dLと正常であり、糖尿病による尿糖ではありません。本例はSGLT2阻害薬を規則正しく服用しています。SGLT2阻害薬は近位尿細管でのグルコース再吸収を阻害して尿中へのグルコース排泄を促すため、血糖値が正常でも尿糖が陽性となります。この作用は腎保護効果をもたらし、慢性腎臓病の治療に用いられます。尿潜血は尿糖の検査結果に影響しないと考えられます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成