75 歳の男性。健診の腹部超音波検査で異常所見を指摘され来院した。既往歴に、高血…
75 歳の男性。健診の腹部超音波検査で異常所見を指摘され来院した。既往歴に、高血圧と脂質異常症がある。身長167 cm、体重78 kg。体温36.0 ℃。脈拍70/分、整。血圧134/80mmHg。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しないが、上腹部に拍動性腫瘤を触知する。両側足背動脈を良好に触知する。血液所見:赤血球468 万、Hb 13.9 g/dL、白血球8,300、血小板21 万。血液生化学所見:尿素窒素20 mg/dL、クレアチニン1.2 mg/dL。CRP 0.2 mg/dL。腹部造影CT(別冊No. 3)を別に示す。以下は、研修医がこの疾患の治療方針について患者からの質問に応答している様子である。患者:「手術が必要なのでしょうか。症状はないので迷います」研修医:「①症状がなくても破裂する危険があります。動脈瘤の大きさから考えて手術をお勧めします。手術は、人工血管置換術とステントグラフト内挿術の2 種類があります」患 者:「人工血管置換術はどのような治療ですか」研修医:「②大動脈を遮断して行う手術です。③高齢者や併存疾患の多い患者さんに推奨されます」患 者:「ステントグラフトとは何でしょうか」研修医:「ステントという金属の支持組織と人工血管をあわせた医療器具です。④カテーテルを用いて動脈内に挿入します。日本では、⑤この治療のほうが多く行われています」下線部のうち、誤っているのはどれか。
- ⑴ ①正しい内容です。無症状でも瘤径が大きければ破裂の危険があります。
- ⑵ ②正しい内容です。人工血管置換術では大動脈を遮断して手術を行います。
- ⑶ ③誤りです。高齢者や併存疾患の多い患者には低侵襲なステントグラフト内挿術が推奨されます。
- ⑷ ④正しい内容です。ステントグラフトはカテーテルを用いて動脈内に挿入します。
- ⑸ ⑤正しい内容です。わが国では現在、ステントグラフト内挿術の方が多く行われています。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑶です。腹部大動脈瘤は無症状でも破裂の危険があり、最大短径が男性で55mm以上などの場合に治療が推奨されます。治療は、開腹して大動脈を遮断し瘤を人工血管に置換する人工血管置換術と、カテーテルを用いて大腿動脈などからステントグラフトを挿入するステントグラフト内挿術(EVAR)があります。人工血管置換術は侵襲が大きいため、比較的若く併存疾患が少ない低リスクの患者に適し、高齢者やハイリスク患者には低侵襲なEVARが推奨されます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成