経過観察のために入院となったが、症状は消失し、翌日に退院した。入院中に病歴を再度…
52 歳の女性。腹部造影CT 検査のために来院した。現病歴 : 2 週間前の健康診断で実施された腹部超音波検査で肝臓の結節性病変を指摘されたため、精査目的で受診した。医師から造影CT 検査について説明を受け、静脈路確保後に腹部造影CT 検査が施行された。造影CT 検査前の意識は清明で、バイタルサインに異常は認めなかったが、検査を終了してから5 分後に息苦しさと気分不快が出現した。既往歴 : 脂質異常症で食事療法を行っている。生活歴 : 会社で事務職をしている。夫と2 人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。ペットは飼育していない。家族歴 : 父が肺癌。現 症 : 意識レベルはJCSⅡ-10。身長160 cm、体重56 kg。体温35.0 ℃。脈拍112/分、整。血圧76/48mmHg。呼吸数28/分。SpO2 96 %(room air)。毛細血管再充満時間は3 秒である。冷感と皮膚の湿潤を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。顔面に浮腫、胸腹部に発赤と腫脹を認める。心音に異常を認めない。発声は可能であるが、吸気性喘鳴を認める。
経過観察のために入院となったが、症状は消失し、翌日に退院した。入院中に病歴を再度聴取したところ、以前にヨード造影剤を静注した際に気分不快が出現したことが判明した。この患者における有害事象の再発防止に必要なのはどれか。
- ⑴ クリニカルパスを作成する。クリニカルパスは標準的な診療計画で、この患者の再発防止策としては不十分です。
- ⑵ 医療事故調査制度を利用する。医療事故調査制度は予期せぬ死亡や死産が対象で、本例は該当しません。
- ⑶ 医療安全支援センターを利用する。医療安全支援センターは患者や住民からの相談窓口で、本例の再発防止に直接つながりません。
- ⑷ 使用した造影剤の製薬会社に報告する。副作用の報告は医薬品安全性情報に役立ちますが、この患者の再発防止には直接つながりません。
- ⑸ 患者の診療録上の所定の位置に有害事象を記録する。診療録の所定の位置にアレルギーを記録し、関係者が確実に確認できるようにすることが再発防止に必要です。
解説
正解は⑸です。以前のヨード造影剤投与で気分不快があったことが把握されておらず、今回アナフィラキシーが起きました。同じ患者での再発を防ぐには、造影剤アレルギーの情報を診療録の所定の位置(アレルギー欄など)に記録し、電子カルテのアラートなどでどの医療者も確認できるようにすることが必要です。患者自身にも伝え、他院を受診する際に申告するよう指導します。医療事故調査制度は予期しない死亡事例が対象で、本例は該当しないと判断します。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成