洞調律に復帰後、緊急冠動脈造影検査のためカテーテル室に移動した。平均血圧60 m…
60 歳の男性。激しい胸痛と息苦しさを主訴に救急車で搬入された。現病歴 : 7 日前から10 分程度の平地歩行で前胸部の絞扼感と息苦しさとを自覚していたが、5 分程度の休息で症状は消失していた。本日午後10 時に勃起不全の治療薬としてPDE5〈phosphodiesterase5〉阻害薬を服用した。午後10 時30 分から突然の強い胸痛を自覚し、30 分以上持続したため妻が救急車を要請した。既往歴 : 10 年前から糖尿病で経口糖尿病薬、1 年前から勃起不全に対してPDE5〈phosphodiesterase5〉阻害薬を服用中である。生活歴 : 喫煙は10 本/日を40 年間。飲酒は機会飲酒。妻と2 人暮らし。家族歴 : 母が糖尿病。現 症 : 胸痛で苦悶様の顔貌をしているが呼びかけには応じる。身長169 cm、体重72 kg。体温36.3 ℃。心拍数56/分、整。血圧80/46mmHg。呼吸数18/分。SpO2 96 %(room air)。冷汗を認め、四肢末梢に冷感を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。12 誘導心電図でII、III、aVF のST 上昇を認める。右側胸部誘導でもST 上昇を認める。心エコー検査では下壁の壁運動低下に加えて右室の壁運動低下も認める。
洞調律に復帰後、緊急冠動脈造影検査のためカテーテル室に移動した。平均血圧60 mmHg 以上の維持が困難で、心拍数も120/分を超えて不穏状態となった。次に行う治療で適切なのはどれか。
- ⑴ 植込み型除細動器植込み型除細動器は致死的不整脈の再発予防に用いる機器で、急性期の循環補助にはなりません。
- ⑵ 永久ペースメーカ永久ペースメーカは徐脈性不整脈に用いる機器で、心原性ショックの治療にはなりません。
- ⑶ 補助人工心臓〈VAD〉補助人工心臓は長期的な循環補助に用いるもので、緊急時の初期治療としては用いません。
- ⑷ 大動脈内バルーンパンピング〈IABP〉IABPの補助効果は限られ、右室梗塞による重症の心原性ショックでは十分な効果が期待しにくいです。
- ⑸ ECMO〈Extracorporeal membrane oxygenation〉薬物療法に反応しない重症の心原性ショックには、強力な循環補助が可能なECMOを導入します。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑸です。右室梗塞を伴う下壁梗塞による心原性ショックで、心室細動からの蘇生後も、薬物療法では平均血圧60 mmHg以上を維持できず、頻脈と不穏(脳灌流低下)を呈しています。大動脈内バルーンパンピング(IABP)は左室の後負荷を減らし冠血流を補助しますが、補助効果は限られ、右室不全への効果は乏しいです。このような重症の心原性ショックには、循環と酸素化を強力に補助できるVA-ECMOを導入し、緊急冠動脈造影と再灌流療法を行います。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成