アルコール性肝障害の診断で入院となった。投与すべき薬剤はどれか。
52 歳の男性。全身倦怠感と発汗を主訴に来院した。現病歴 : 2 週間前から全身倦怠感を自覚し、2 日前に職場の近くの診療所で血液検査を受けた。アルコール性肝障害と診断され、入院治療のため紹介受診した。今朝から発汗を自覚している。診察室に入室後は、手が震えて問診票にうまく記入できなかったことを気にしている。既往歴 : 特記すべきことはない。生活歴 : 職業は会社員。喫煙は昨年まで加熱式たばこを20 本/日。飲酒は仕事帰りに居酒屋でビール中ジョッキ2 ~3 杯/日、休日は自宅で350 mL の缶チューハイを3 ~4 本/日。最近はアルコール度数の高いものを選んで買っていた。休日に朝から飲酒していることを妻から注意されたことがある。2 日前に診療所を受診した後からは禁酒している。家族歴 : 特記すべきことはない。現 症 : 意識は清明。身長172 cm、体重73 kg。体温36.8 ℃。脈拍108/分、整。血圧132/80 mmHg。皮膚は軽度湿潤しているが皮疹などは認めない。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、波動を認めない。肝・脾を触知しない。検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球452 万、Hb 14.5 g/dL、白血球8,600、血小板20 万、PT-INR 1.0(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白7.2 g/dL、アルブミン4.6 g/dL、IgG 1,210 mg/dL(基準861~1,747)、IgA 682 mg/dL(基準93~393)、IgM 96 mg/dL(基準33~183)、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 482 U/L、ALT 416 U/L、ALP 198 U/L(基準38~113)、γ-GT 682 U/L(基準13~64)、尿素窒素16 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、尿酸6.4 mg/dL、血糖110 mg/dL、TSH 2.0 μU/mL(基準0.2~4.0)、FT41.8 ng/dL(基準0.8~2.2)。免疫血清学所見:HBs 抗原陰性、HCV 抗体陰性。腹部超音波検査で脂肪肝を認める。
アルコール性肝障害の診断で入院となった。投与すべき薬剤はどれか。
- ⑴ 降圧薬血圧132/80 mmHgで、降圧薬を投与する必要はありません。
- ⑵ 血糖降下薬血糖110 mg/dLで糖尿病の所見はなく、血糖降下薬は不要です。
- ⑶ 抗甲状腺薬TSHとFT4は正常で、抗甲状腺薬の適応はありません。
- ⑷ 尿酸降下薬尿酸6.4 mg/dLは正常範囲で、尿酸降下薬は不要です。
- ⑸ ベンゾジアゼピン系薬アルコール離脱症候群の予防と治療には、交差耐性をもつベンゾジアゼピン系薬を投与します。
解説
正解は⑸です。アルコール離脱症候群の初期症状が出現しており、入院後に進行すると離脱けいれんや振戦せん妄(断酒後48〜96時間頃)をきたすおそれがあります。離脱症状の予防と治療には、アルコールと交差耐性をもつベンゾジアゼピン系薬を投与します。肝障害がある場合は、肝臓での代謝の影響を受けにくいロラゼパムなどを選ぶこともあります。血圧、血糖、甲状腺機能、尿酸値はいずれも治療を要する異常ではないため、ほかの薬剤は不要です。あわせてビタミンB1の補充も行います。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成