この患者の直腸指診で得られる便の性状で可能性が高いのはどれか。
70 歳の女性。心窩部痛を主訴に来院した。現病歴 : 1 週間前から空腹時に軽度の心窩部痛を自覚していたが、昨日から増悪したため受診した。悪心はなく、食欲は保たれている。その他の症状として、1 か月前から持続性の腰痛がある。既往歴 : 10 年前から高血圧症でカルシウム拮抗薬を服用している。生活歴 : 喫煙歴はない。食生活や体重に変化はない。現 症 : 意識は清明。身長154 cm、体重55 kg。体温36.0 ℃。脈拍96/分、整。血圧108/56mmHg。呼吸数22/分。SpO2 99 %(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。甲状腺と頸部リンパ節を触知しない。心基部にLevine 1/6 の収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦。腸雑音に異常を認めない。心窩部に圧痛を認める。肝・脾を触知しない。医療面接は以下のように続いた。医 師「①お酒は飲まれますか」患 者「全く飲みません」医 師「②便の色はどうですか」患 者「流してしまって見ていないです」医 師「③健康診断は受けていますか」患 者「受けていません」医 師「④血圧の薬以外に何か服用をされていますか」患 者「腰痛に対して1 か月前から市販の鎮痛薬を飲んでいます」医 師「⑤自分の病気についてどう考えていますか」患 者「父が胃癌で亡くなったので、自分も胃癌なのではないかと心配です」
この患者の直腸指診で得られる便の性状で可能性が高いのはどれか。
- ⑴ 脂肪便脂肪便は膵外分泌不全などの消化吸収障害でみられ、本例には合いません。
- ⑵ 水様便水様便は感染性腸炎などでみられ、本例の病態とは合いません。
- ⑶ 粘血便粘血便は大腸の炎症や腫瘍でみられ、上部消化管出血の所見ではありません。
- ⑷ 灰白色便灰白色便は閉塞性黄疸で胆汁が腸管に流れない場合にみられます。
- ⑸ タール便NSAIDs潰瘍などの上部消化管出血ではヘモグロビンが黒色化し、タール便となります。
解説
正解は⑸です。1か月前から市販の鎮痛薬(NSAIDs)を服用しており、空腹時の心窩部痛、眼瞼結膜の貧血、頻脈、血圧低め、心基部の収縮期雑音(貧血による機能性雑音)から、NSAIDsによる消化性潰瘍からの出血が考えられます。上部消化管からの出血では、血液中のヘモグロビンが胃酸や腸内細菌の作用で黒色化し、黒色のタール便となります。直腸指診でタール便を確認できれば、上部消化管出血を強く示唆し、緊急内視鏡の判断に役立ちます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成