問3 会話文中の D にあてはまるものとして最も適切なものを,次の1 ~4 のう…
次の文章を読んで,問1 ~問4 に答えよ。 1 生徒たちが「公共」の授業のまとめとして,持続可能な社会の形成に関する課題について学ん でいる。 会話文 先 生:今日は地球温暖化に関する国際的な取組について考えてみたいと思います。世界の二 酸化炭素(CO2)排出に関してまとめた資料1 を見てください。大気中のCO2 濃度が 増加する主な原因は,石炭・石油など化石燃料の燃焼によるものです。国・地域別排 出量比が高い国・地域の特徴として,どのようなことが言えるでしょうか。 生徒X:国・地域別排出量比が資料1 中の上位の3 か国・地域に共通しているのは, A ということだと思います。 先 生:そうですね。では一人当たりの排出量については,どうでしょうか。 生徒Y:一人当たりの排出量に関しては,先進国の方が途上国よりも多い傾向がみられます。 生徒X:そうした傾向をふまえると,国・地域別排出量比と一人当たりの排出量が共に上位3 か国・地域に入っているのは, B のみになります。 先 生:なるほど。 B のCO2 排出量は大きな割合を占め,とりわけ重い責任を担って いると言えそうですね。では次に,こうした現状をふまえ,国際的にどのような取組 が行われているか見てみましょう。資料2 は京都議定書とパリ協定についてまとめた ものです。まず,京都議定書とパリ協定の違いについて考えてみましょう。最も大き な違いは何だと思いますか。 生徒X: C だと思います。パリ協定では発展途上国も含めた様々な国が,対策を講じる ことが求められています。 先 生:そうですね。さらに,目標達成の義務化に着目してみると,パリ協定は京都議定書に 比べるとかなり緩いことも違いのひとつとしてあげられます。一方は温室効果ガス削 減目標達成について義務化されていますが,もう一方では温室効果ガス削減目標を提 出しますが,それを達成することは義務ではありません。 生徒Y:地球温暖化に対して,国際的な取組が行われていることは理解できました。今後,パ リ協定の目標が達成できれば気温の上昇を抑えることは可能なのでしょうか。 先 生:パリ協定には5 年に1 回削減目標を見直すというルールが設けられています。 生徒Y:なるほど。地球温暖化が深刻化するなか,より厳しい削減目標を表明することによっ て,各国が温室効果ガス排出ゼロに向かうという強い意志を感じることができます。 生徒X:地球温暖化に関する国際的な取組について考えてみましたが,私たちにも何かできる ことはあるのでしょうか。 先 生:そうですね。では地球温暖化を解決する⒜具体的な方策について,調べてみましょう。 資料1 世界のCO2 排出量に占める国・地域の排出割合と一人当たりの排出量の比較(2021 年) (全国地球温暖化防止活動推進センターホームページにより作成) 資料2 『京都議定書』 京都議定書では,先進国の温室効果ガス排出量について,法的拘束力のある数値目標が 各国ごとに設定されました。先進国全体で2008 年から2012 年までの約束期間に,削減 基準年の排出量から5.2 %削減することが約束されました。日本は6 %の削減を約束 しています。京都議定書は2020 年までの温暖化対策の目標を定めたものです。 『パリ協定』 2015 年に開催された国連気候変動枠組条約第21 回締約国会議(COP21)では,「パリ協 定」が採択されました。パリ協定は「京都議定書」の後継となるもので,2020 年以降の気 候変動問題に関する国際的な枠組みです。気候変動枠組条約に加盟する196 か国が,長 期の温室効果ガス低排出開発戦略を提出するよう努めるべきとしています。 (全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)により作成) ルギー政策について,クラスで発表をしている。 生徒Uの発表スライド 政策:今後20 年間で,①日本での自動車販売に占める電気自動車の割合が50 % を超えるために,新規での電気自動車の購入者への補助金を増やし,②既存の各ガ ソリンスタンドに電気自動車用の急速充電器スタンドを設置する。 説明: ● 地球温暖化を止めるため,走行時の二 酸化炭素(CO2)の排出がない電気自動 車を日本でも増やすべき。(資料1 ) ●2023 年,日本の新車販売台数に占める 電気自動車の割合は1.6 %で,台数は 88,535 台だった。一方で,ノルウェー では2021 年の新車販売台数に占める 電気自動車の割合は65 %である。 ● 「電気自動車は高価で買いにくい」という消費者のため,政府の補助金をもっと増やしていくべき。 ● 電気自動車普及のため国内のインフラ整備も必要である。ガソリンスタンドで急速充電できれ ば便利だろう。 先生の板書 「政策の持続可能性を評価する3 つの観点」 ① 妥当性 … その策が,問題を解決するた めの手段として妥当か,また 問題点の分析は妥当かを検討 する ② 効果 … その策を実施することで,ど のようなプラス/マイナスの 効果や影響が予想できるかを 検討する ③ 実現可能性 … その策は予算が確保できる か,また技術的には実現可能 かを検討する →これら3 つの観点を活用し,他の政策に対して質問や意見を述べよう 資料1 (生産から走行までの排出量合計値) 自動車1 台あたりのCO2 排出量 比較 ハイブリット車(HV) 電気自動車(EV) ガソリン車 (t CO2) 車両製造 走行 (IEA ‘EV Life Cycle Assessment Calculator’ により作成) 会話文 生徒U:私は,スライドで示しているように,日本ではもっと電気自動車を普及させるべきだ と考えています。その理由は,電気自動車は走行時にCO2 を排出しないので,地球 温暖化の防止につながると考えたからです。 先 生:ありがとうございました。Uさんに対する質問や意見がある人は,発言して下さい。な お,板書で皆さんに示した「政策の持続可能性を評価する3 つの観点」を活用して下さい。 生徒V:私が調べた情報だと,電気自動車用の急速充電器は1 台につき,本体価格と工事費を 合わせて500 万円以上もかかるそうです。また,電気工事士の資格がないと設置でき ないとのことです。2023 年の時点で,全国には約28,000 軒のガソリンスタンドがあ ります。先生が板書した「実現可能性」の観点を活用して質問をすると,急速充電器を 全国のガソリンスタンドに設置するというUさんの政策は,どうやってその予算を確 保しますか。また,技術的には実現可能ですか。 生徒U:確かに,必要な費用や技術が揃わなければ,私が考える政策の実現可能性も低いです よね。 生徒W:私が調べたところでは,日本では,2023 年の時点で500 万人以上が既存のガソリン 車などに関連する産業に就いているそうです。このことについて先生が板書した「効 果」の観点を活用して質問をすると, D 。 生徒U:Wさんの言う通り,この政策を実施することの効果について一度考えたほうがよさそ うですね。 先 生:Uさんがスライドで示した資料1 を見ると,電気自動車は製造時にガソリン車の約2 倍のCO2 を排出するようですね。また,約7 割を火力発電に依存する日本では,電 気自動車の動力である電気を作る際にも,たくさんのCO2 を排出します。電気自動 車を推進するためには,まだ多くの課題がありそうですね。 生徒U:ありがとうございました。皆さんの意見をもとに,⒜自らの策を再検討し,練り直し てみます。
問3 会話文中の D にあてはまるものとして最も適切なものを,次の1 ~4 のうちから一 つ選べ。
| 国・地域名 | 国・地域別排出量比(%) | 一人当たり排出量(トン/人) |
|---|---|---|
| 日本 | 3.0 | 7.9 |
| 韓国 | 1.7 | 10.8 |
| 中国 | 32.0 | 7.5 |
| インド | 6.9 | 1.6 |
| ロシア | 5.0 | 11.7 |
| ドイツ | 1.9 | 7.5 |
| アメリカ | 13.7 | 13.7 |
| アフリカ合計 | 3.7 | 0.91 |
- 1 もし電気自動車の購入者が急増したら,その人たちに支払う補助金分の予算はどうやって確保しますか補助金の予算は費用の観点であり、効果を問う質問ではありません。
- 2 電気自動車を推進することで,既存の自動車産業に就く人々の雇用にどう影響しますか既存産業で働く人の雇用にどう影響するかを問う、効果の観点です。
- 3 電気自動車の製造時に多くのCO2 が排出されるため,電気自動車推進はCO2 の問題を解決する手段として妥当ですかCO2の排出量はこのあと先生が話す内容で、Wさんの指摘とずれます。
- 4 国内で既存のガソリン車などの製造をやめて,電気自動車のみを作ることは,技術的に可能ですか技術的に可能かどうかは、実現できるかという別の観点です。
この問題は問題の図(写真・図・表など)を見て答えます。表はこのページに組み直して載せています。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は2です。Wさんが述べているのは、多くの人が既存のガソリン車に関わる産業で働いているという事実です。そこに「効果」の観点から質問をするのですから、政策を実施したときにその人たちの雇用にどう影響するかを問うのが自然な流れになります。予算の確保は費用の観点、CO2の排出量は先生が続けて話す内容、技術的な可否は実現性の観点にあたります。
出典:文部科学省ホームページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/kakomon/1411255_00019.htm)を加工して作成