問4 資料2 に関連して,生徒Xと生徒Yは,遺伝子操作技術を人間に適用することに…
生徒たちは「公共」の学習のはじまりとして,「公共的な空間」をつくる私たちの生き方や考え方 について学んでいる。問1 ~問5 に答えよ。 1 先生と生徒たちが私たちの生き方や考え方について会話している。 会話文 先 生:先日,職業の意義や職業選択について学習し,職業選択は人生にとって大きなテーマ であることが分かったと思います。資料1 を見てください。この資料1 は現在18 歳 の4 人の高校生が,これまでの自分の人生を振り返りながら,将来のライフプランを 考えたものです。現在を中心として,左側はこれまでの活動,つまり18 歳になるま でにどのような活動をして自分のキャリアを積み重ねてきたかを示し,右側は今後の ライフプラン,つまり今後どのような人生を歩んでいきたいのかについて示していま す。この資料1 を見て,どんな点に気がつきますか。 生徒T:私は4 人のこれまでの活動に注目してみました。これまでの活動を見てみると,4 人と も学校以外の地域や家庭で,様々な事を学んでいるのだということに気がつきました。 生徒U:私は同様に, A ということに気がつきました。また,高等学校にも様々な学科 や多様な学びがあるのだと気がつきました。 生徒V:私は今後のライフプランに着目しました。今後のライフプランを見ると,4 人全員が 将来の職業について真剣に考えていることに気がつきました。 生徒W:私も今後のライフプランに着目しました。今後のライフプランを見ると, B と いうことに気がつきました。新たなことにチャレンジしようとする姿勢が,すごいと 思います。 生徒T:ライフプランに結婚と書いている人が3 人いるけれど,私は結婚よりも仕事や趣味な ど自分がやりたいことが多いから結婚とは書きにくいです。 生徒V:私は結婚と書きたいと思います。でも,子供を育てたいかどうかは,ちょっと微妙です。 先 生:それはなぜですか。 生徒V:子供を育てるためには,職場やパートナーの理解が必要だと思うので,1 人では決め られないです。 生徒W:確かにそうだよね。でも,私は結婚して子供を育てたいなあ。私は3 人兄弟の末っ子 で,両親は2 人とも働いていて忙しそうだけれど,最近は子育て支援の制度も整って きて,仕事をしながら私たち兄弟を育てるのが楽しいし,充実しているといつも話し ているよ。 生徒U:それにしても就職とか結婚とか子育てとか,⒜人生には課題が多いように感じるね。 生徒W:課題と考えると大変だけど,そこには大きな喜びや楽しみがあると思うから,私はで きたら仕事も結婚も子育ても前向きに考えていきたいと思います。 先 生:そうですね。自分が豊かな人生をおくる上で,どのようなことにチャレンジし,どの ような経験をし,何を得ていこうとするのかを考えることが大切ですね。皆さんも, これまでの歩みを振り返りながら自分を見つめなおし,ライフプランを考えてみま しょう。 資料1 水泳教室に 通う 保育園 歳 小学校 仕事(地方公務員になって地域のために働く) 現在 今後のライフプラン これまでの活動 中学校 野球部 高等学校 (普通科) 野球部 大学 (地域経済 学部) ボランティア 活動をする 学 校 や 仕 事 就 職 結 婚 第 子 誕 生 第 子 誕 生 第 子 誕 生 家 庭 や 地 域 地域の少年 野球チーム で活動 地域の サッカー教室 に通う 幼稚園 歳 小学校 仕事(自動車メーカーの工場でものづくりをする) 現在 今後のライフプラン これまでの活動 中学校 生徒会長 高等学校 (工業科) 生徒会会計 サッカーチームを作り サッカーを続ける 消防団に入り地域 のために活動する 学 校 や 仕 事 就 職 結 婚 家 庭 や 地 域 地元のサッカークラブに 所属し活動 英会話教室に通う 保育園 歳 小学校 仕事(英語の力を生かして,海外で働く) 現在 今後のライフプラン これまでの活動 中等教育学校(注1 )海外の大学 へ留学 学 校 や 仕 事 就 職 結 婚 第 子 誕 生 家 庭 や 地 域 ピアノ教室 に通う アルバイト こども園 歳 義務教育学校(注2 ) 仕事(プログラミングなど情報 関係の仕事をする) 情報関係の会社を 経営する 現在 今後のライフプラン これまでの活動 高等学校 (定時制) 専門学校 (情報系) 通信教育などで情報関係 の技能を高める 学 校 や 仕 事 就 職 起 業 家 庭 や 地 域 地域の おはやし教室で 太鼓を習う (注1 ) 中等教育学校とは,中学校から高等学校までの6 年間を1 つの学校で一貫した教育を行う学校 (注2 ) 義務教育学校とは,小学校から中学校までの9 年間を1 つの学校で教育を行う小中一貫校 下の会話文は,発表の前に生徒Xと生徒Yが交わしたものである。 資料2 度重なる紛争で使用された生物化学兵器や放射性物質の影響で,人類は深刻な遺伝子疾 患の増加という問題に直面していた。健康な次世代を残せない人々は総人口の20 %に達 し,その救済措置として本格的な遺伝子操作技術が解禁された。これは両親の遺伝子の無 傷な部分をパッチワークのようにつなぎ合わせて受精卵に移植するもので,この技術によ り出生した人間の多くは知能・身体能力とも優れており,髪・肌・目の色など,外見のデ ザインも可能であった。彼らは「コーディネイター」と呼称され,多数派である自然に出生 した人間「ナチュラル」と,次第に対立するようになっていった。 (矢立肇・富野由悠季原作/後藤リウ著『機動戦士ガンダムSEED』により作成) 会話文 生徒X:この資料2 は,近未来の世界を描いたあるアニメーションの設定をまとめたものなん だけど,今度の「公共」の授業の発表でこの資料を利用して,生命倫理,特に人間の遺 伝子操作の是非について,みんなと一緒に考えてみたいと思うんだ。 生徒Y:このアニメーションは私も知ってるよ。この物語では,遺伝子操作で優れた人類を生 み出したことが差別や階級対立の原因になってしまったけれど,プラスの側面もある んじゃないかな。遺伝子の研究は現代社会においても,農業や医療など様々な分野で 実用化されているよね。 生徒X:そうだね。でも,それによって本当に人間は幸せになれたのかな。かえって新たな悩 みを抱えてしまったように思うんだ。 生徒Y:新たな悩みって,どんなことがあるのかな。 生徒X:例えば遺伝子診断は,病気の予防や早期治療に役立つと言われているね。約10 年前 にアメリカの俳優さんが遺伝子診断で乳がん発症のリスクが分かって,両乳房を切除 したというニュースがあったよね。今では約10 万人が検査を受けているそうだよ。 だけど, C と思う。 生徒Y:なるほど。 生徒X:それから出生前診断は,胎児の障害や遺伝性疾患の有無を知ることが部分的に可能に なったと言われているけれど, D 。実際,出生前診断で胎児に先天的な異常の 可能性が認められた場合,日本では約8 割の親が人工妊娠中絶を選んでいるという データがあるんだ。 生徒Y:それだと遺伝子診断は,かつての優生思想のように,病気や障害をもつ人々の生きる 権利を奪うものになってしまうね。この間ニュースで知ったんだけど,日本では 1948 年に定められた旧優生保護法に基づいて, E んだよね。 生徒X:そうだね。だから新しい技術がかえって個人の尊厳や人格を傷つけてしまう危険性も あると思うんだ。 生徒Y:生命倫理に関わる問題は,今後もさらに新しい技術が導入されて,一般的になる可能 性があるね。だからこそ,みんなが自分の問題として考える必要があるよね。
問4 資料2 に関連して,生徒Xと生徒Yは,遺伝子操作技術を人間に適用することに対する推 進派と反対派の主張をそれぞれ明確にするために,生徒Xは推進派の主張,生徒Yは反対派 の主張の参考となる思想家の考え方をまとめたカード1 ,カード2 ,カード3 ,カード4 を 作成した。生徒Xと生徒Yの作成したカードの組合せとして適切なものを,下の1 ~4 のう ちから一つ選べ。
カード1 親は,子供のために最良と思われる選 択をする自由をもつべきである。遺伝 子操作技術を選択することが,子供の 自立や「開かれた未来に対する権利」を 侵害することなく,むしろその可能性 を広げることができるものであれば, 道徳的にも許容されるべきである。 カード2 遺伝子操作技術が広まると,人間が「製 品」として扱われるリスクがあり,これ が人間の尊厳を損なうことにつなが る。また,子供は自分の人生や能力が 親の選択によって決定されたと感じ, 子供の自己理解や自律性が損なわれる おそれがある。 カード3 遺伝子操作技術が市場に委ねられるこ とで競争が生まれれば,技術の進歩や コストの低下が期待され,経済格差に よる不平等は解消される。遺伝子操作 が多くの人々に利益をもたらし,全体 の幸福を増進するのであれば,この技 術は肯定されるべきである。 カード4 遺伝子操作技術の選択は,自然や運命 に対する謙虚さを欠く行為であり,親 が子供の将来を完全にコントロールし ようとする傲慢さを示している。人生 は神からの「贈り物」であり,ありのま まの自分や他者を受け入れることが重 要である。
- 1 生徒X(推進派):カード1 ・カード2 生徒Y(反対派):カード3 ・カード4カード2は人間の尊厳が損なわれる危険を説く反対派の主張です。
- 2 生徒X(推進派):カード1 ・カード3 生徒Y(反対派):カード2 ・カード4許容を説くカード1と3が推進派、危険を説くカード2と4が反対派です。
- 3 生徒X(推進派):カード2 ・カード3 生徒Y(反対派):カード1 ・カード4カード1は技術を許容する立場で、反対派には当たりません。
- 4 生徒X(推進派):カード2 ・カード4 生徒Y(反対派):カード1 ・カード3カード3は全体の幸福を理由に肯定する、推進派の主張です。
この問題は問題の図(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は2です。カード1は、子どもの可能性を広げるのであれば道徳的に許されるとしており、推進派の主張にあたります。カード3も、全体の幸福が増すなら肯定されるべきだとしており推進派です。一方カード2は人間の尊厳や自律性が損なわれる危険を、カード4は自然や運命に対する謙虚さの欠如を説いており、どちらも反対派の主張にあたります。
出典:文部科学省ホームページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/kakomon/1411255_00019.htm)を加工して作成