問4 会話文の趣旨を踏まえ, C にあてはまる民主政治の基本的原理を説明した発言…
生徒たちは「公共」の学習のはじまりとして,「公共的な空間」をつくる私たちの生き方や考え方 について学んでいる。問1 ~問5 に答えよ。 1 生徒Xと生徒Yが,自分の進路について会話している。 会話文 生徒X:ホームルームで「進路希望調査」があったけど,どうするか何も決まってないんだよ ね。 生徒Y:そうなんだ。私は大学に進学することにしていて,専攻は社会学か国際関係学にしよ うと思っているよ。 生徒X:もう決まっているなんて,すごいね。でも,大学に行って勉強することで,どのよう な力を身に付けることができるんだろう。卒業後に就職する企業が求める能力とは, 違ったりしないのかな。 生徒Y:私も気になって,⒜企業が求める能力等と大学での学びとの関係について資料を調べ たんだ。企業へのアンケートでは,大学生などに主体性や実行力を多くの企業が求め るようだけれど,それらは,具体的に測定するのは難しいと思うんだよね。大学生へ の調査では,授業で身に付く技術や高められる能力もあるとわかるから,大学での過 ごし方も大事だと考えたよ。 生徒X:そうだよね。大学を卒業するまでの間で,AI やテクノロジーの進歩など社会も変化 するだろうから,求められる技術や能力も変わるかもしれない。ますます,進路につ いての悩みが出てきたなぁ。 生徒Y:昨日,「公共」の授業で実存主義を学んだよね。⒝サルトルの考え方が面白いと思った から,図書室で本を借りて読んでみたらいいよ。きっと,そこに,残りの高校生活を どのように過ごしていったらいいのかのヒントがあるんじゃないかな。 先 生:今日はゴミ問題について考えてみましょう。ゴミの排出量を減らす取組みが進んでい ますが,焼却できず,リサイクルも難しいゴミは,最終処分場に廃棄されることにな ります。新たに最終処分場を設置しようとすると,有害物質による土壌の汚染や健康 被害が,設置された地区に広がるおそれがあることから,地域住民の理解が得られな いことも少なくありません。一方,最終処分場がなければ,処分できないゴミが住宅 地に放置されたり,不法に投棄されたりすることが懸念されます。いま,私たちの 「もんか高校」がある「もんか市」内にゴミの最終処分場を1 か所設置するとしたら,ど の地区が望ましいでしょうか。次の資料4 と資料5 を参考に考えてみてください。 資料4 もんか市を構成する3 地区の人口及び面積 資料5 もんか市の概略図 いろは区 ちりぬ区 もんか病院 ほへと区 もんか高校 生徒X:「ほへと区」は,設置にともなう苦痛を感じる人が,人口密度から一番少なくなること が予測できます。そこで私は, A の考え方に基づいて「ほへと区」がいいと思い ます。 生徒Y:「ほへと区」だと,私たちの学校の近くに設置されるかもしれないよね。「ほへと区」だ けは避けたいというのが私の本音。人口が3 地区の中で一番多い「ちりぬ区」は,ゴミ の排出量も他の地区に比べて多いはずだから,「ちりぬ区」が引き受ければいいんじゃ ないかな。 生徒Z:私は,こうした政策決定には道徳的な感覚も必要で,自分は嫌だから他人に押し付け よう,と考えるのは望ましくないと思います。私たちは,「公共」の授業で習った B という「思いやり」の徳などを発揮して,判断すべきではないでしょうか。 生徒Y:Zさんの言う孔子の徳を政策にあてはめて考えるならば,健康を気遣う人が多く通う 「もんか病院」のある「ちりぬ区」は候補地から外した方がいい,と判断することもでき るね。 先 生:こうして複数の観点から議論を深めることで,みんなが納得できる解決案を粘り強く 探っていくことが大切ですね。 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス 日本国憲法 第11 条 (前略)この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利として, 現在及び将来の国民に与へられる。 会話文 生徒X:この資料6 で示された二つの条文を比較すると,根本的に人権に対する考え方が異 なっていますね。 生徒Y:かつて,大日本帝国憲法の下でつくられた法律によって,居住や移転の自由だけでは なく,労働運動や社会運動が弾圧され,国民の言論の自由も制限されたと学んできま した。 生徒Z:現在は,基本的人権は永久不可侵とされているので,安心です。この状況が続くように 私たちも意識を高めていく必要がありますね。日本国憲法第11 条の背景には,法律が つくられる前から誰もが普遍的な権利をもっているという考え方があるんでしたね。 先 生:現在の日本には様々な法律がありますが,その法律の内容が日本国憲法に反するもの になっている場合は無効になります。その場合は,法律の改正や廃止をすることが求 められます。 生徒Y:そうか。為政者が善良な人だとしても,また,正しい手続きに則って法律がつくられ たとしても,法律の正当性は考えなくてはならないのですね。例えば C という ことになります。 先 生:そのような考え方を,「法の支配」といいます。
問4 会話文の趣旨を踏まえ, C にあてはまる民主政治の基本的原理を説明した発言とし て適切なものを,次の1 ~4 のうちから一つ選べ。
- 1 「悪法も法なり」という考え方を手掛かりにすると,法律で定められているのであれば,その内容の正しさを問わないようにすべき「悪法も法なり」は法律の内容の正しさを問わずに従うべきだとする考え方で、法の内容そのものを問い直す「法の支配」とは逆の発想です。
- 2 「国王といえども神と法の下にある」という考え方を手掛かりにすると,為政者に対して法に基づいた自由と権利の保障を主張していくべき「国王といえども神と法の下にある」は、為政者の権力も法によって制限されるべきだとする「法の支配」の考え方を端的に表す言葉です。
- 3 「政を為すに徳を以てす」という考え方を手掛かりにすると,一層の修養に励み徳を積むことを為政者に促すべき「政を為すに徳を以てす」は孔子の考え方で、為政者の徳による統治を説くもので、法によって権力を制限する「法の支配」とは異なる考え方です。
- 4 「政治は道徳とは無縁である」という考え方を手掛かりにすると,為政者に現実主義的な政治を求めていくべき「政治は道徳とは無縁である」はマキァヴェリの現実主義的な政治観を表す言葉で、法によって権力を制限する「法の支配」の考え方とは異なります。
この問題は問題の図(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は2です。会話文は、法律の内容の正しさを問わずに従うべきだとする発想ではなく、為政者も法に拘束され国民の権利や自由を保障すべきだとする「法の支配」の考え方を説明しています。「国王といえども神と法の下にある」という中世イギリスの法諺は、権力者の行為を法によって制限し、国民の自由と権利の保障を求める発想を端的に表しています。「悪法も法なり」「政を為すに徳を以てす」「政治は道徳とは無縁である」は、いずれも法の支配とは異なる考え方です。
出典:文部科学省ホームページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/kakomon/1411255_00017.htm)を加工して作成