64 歳の男性。腰痛を主訴に来院した。2 週間前に腰痛をきっかけに多発性骨髄腫と…
64 歳の男性。腰痛を主訴に来院した。2 週間前に腰痛をきっかけに多発性骨髄腫と診断され治療を受けている。腰痛に対してアセトアミノフェンを服用していたが痛みが強くなったため家族に付き添われて受診した。3 年前から胃潰瘍を繰り返している。意識は清明。身長168 cm、体重58 kg。体温36.4 ℃。脈拍80/分、整。血圧130/78mmHg。呼吸数14/分。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球308 万、Hb 10.8 g/dL、Ht 29 %、白血球4,400(分葉核好中球57 %、好酸球4 %、単球6 %、リンパ球33 %)、血小板16 万。血液生化学所見:総蛋白10.8 g/dL、アルブミン3.1 g/dL、IgG 6,912 mg/dL(基準861~1,747)、IgA 22 mg/dL(基準93~393)、IgM 7 mg/dL(基準33~183)、AST22 U/L、ALT 23 U/L、LD 180 U/L(基準124~222)、尿素窒素17 mg/dL、クレアチニン1.8 mg/dL。CRP 0.1 mg/dL。腹部骨盤部単純CT で腰椎と腸骨に多発性の溶骨所見を認めた。疼痛コントロールを強化するにあたり、適切な対応はどれか。
- ⑴ NSAID 経口薬に変更する。胃潰瘍の既往と腎障害があり、NSAIDは消化管出血や腎障害の悪化を招きます。
- ⑵ 塩酸モルヒネを急速静注する。オピオイドの初回導入で急速静注は呼吸抑制の危険があり、不適切です。
- ⑶ オキシコドン経口薬を追加する。腎障害でも比較的使いやすい経口オキシコドンを追加して疼痛を強化します。
- ⑷ フェンタニル貼付薬に変更する。フェンタニル貼付薬は用量調整が難しく、オピオイド未使用例の導入には適しません。
- ⑸ モルヒネ塩酸塩水和物坐薬に変更する。モルヒネは腎障害で代謝産物が蓄積しやすく、また鎮痛補助のアセトアミノフェンを中止する理由もありません。
解説
正解は⑶です。多発性骨髄腫の骨病変による腰痛がアセトアミノフェンで十分に制御できなくなっており、WHO方式のがん疼痛治療に沿って、オピオイドを追加します。本例は胃潰瘍を繰り返しており、腎機能障害(クレアチニン1.8mg/dL)もあるため、NSAIDは消化管出血や腎障害悪化の危険があり避けます。モルヒネは代謝産物が腎排泄で蓄積しやすく、腎障害例では慎重投与です。初めての導入では経口オキシコドンを少量から追加するのが適切です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成