56 歳の男性。労作時の胸部違和感を主訴に来院した。約1 か月前から、趣味のテニ…
56 歳の男性。労作時の胸部違和感を主訴に来院した。約1 か月前から、趣味のテニスで運動中に胸部違和感があったが、気にしていなかった。知人に勧められて受診した。高血圧と脂質異常症に対して服薬治療中である。20 歳から50 歳まで、1 日20 本程度の喫煙歴がある。意識は清明。身長168 cm、体重78 kg。体温36.4 ℃。脈拍84/分、整。血圧146/90mmHg。SpO2 98 %(room air)。頸静脈の怒張を認めず、心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢は浮腫を認めない。血液生化学所見:尿素窒素18 mg/dL、クレアチニン0.9 mg/dL、トリグリセリド278 mg/dL、HDL コレステロール32 mg/dL、LDL コレステロール134 mg/dL。胸部エックス線写真、心電図に異常を認めない。新規にβ 遮断薬と少量のアスピリンの服薬を開始し、スタチンを最大量に増量したところ、胸部症状は消失した。冠動脈CT では、左前下行枝に狭窄病変の存在が疑われた。運動負荷心筋血流SPECT を施行したところ、十分な運動負荷をかけることができ、経過中に、心電図に虚血性の変化を認めず、胸部症状を訴えなかった。SPECT(別冊No. 14)を別に示す。現時点で適切な対応はどれか。
- ⑴ 冠動脈造影検査を行う。負荷で虚血が証明されておらず、侵襲的な冠動脈造影を行う必要性は低いです。
- ⑵ 冠動脈CT を再度施行する。冠動脈CTの再検は新たな情報を加えず、被曝も伴います。
- ⑶ 経皮的冠動脈形成術を行う。虚血が証明されない病変へのPCIは予後を改善しません。
- ⑷ 薬物療法を継続して経過観察する。虚血のない安定冠動脈疾患では至適薬物療法を継続して経過観察します。
- ⑸ 薬物療法を中止して通院を終了する。冠動脈病変と危険因子があり、薬物療法の中止は不適切です。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑷です。労作時の胸部症状があり、冠動脈CTで左前下行枝の狭窄が疑われましたが、薬物療法開始後に症状は消失しています。十分な運動負荷をかけた心筋血流SPECTでも、心電図変化や症状はなく、灌流欠損も認めないと考えられます。虚血が証明されない安定冠動脈疾患では、血行再建による予後改善効果は乏しく、至適薬物療法を継続して経過観察するのが適切です。危険因子の管理も引き続き重要です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成