この患者で認められる身体所見はどれか。
77 歳の女性。熱傷のため救急車で搬入された。現病歴 : 本日、自宅の風呂場から叫び声が聞こえ、息子が様子を見に行った。熱湯に患者の下半身がつかり、身動きがとれなくなっているところを発見され、なんとか浴槽から引きずり出された。息子が救急車を要請した。既往歴 : 軽度認知症を指摘されている。高血圧症と糖尿病で降圧薬、血糖降下薬を内服している。生活歴 : 息子と2 人暮らし。家族歴 : 特記すべきことはない。現 症 : 意識レベルはJCSⅠ-2、GCS 14(E 4 V 4 M 6 )。身長154 cm、体重50 kg。体温36.8 ℃。心拍数108/分、整。血圧104/52mmHg。呼吸数22/分。SpO2 94 %(room air)。眼瞼結膜に貧血を認めない。甲状腺と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。陰部、両側下肢から足底にかけてⅢ度熱傷を認める。虐待を疑うような徴候、身体所見は認めない。警察に報告し、事件性はないと判断された。熱傷範囲(別冊No. 6)を別に示す。検査所見 : 血液所見:赤血球486 万、Hb 15.3 g/dL、Ht 47 %、白血球29,760(桿状核好中球1 %、分葉核好中球92 %、好酸球0 %、好塩基球0 %、単球5 %、リンパ球2 %)、血小板27 万、PT-INR 0.9(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白6.1 g/dL、アルブミン3.3 g/dL、総ビリルビン2.0 mg/dL、AST 77 U/L、ALT 27 U/L、LD 350 U/L(基準124~222)、ALP 75 U/L(基準38~113)、γ-GT 15U/L(基準9 ~32)、アミラーゼ93 U/L(基準44~132)、CK 250 U/L(基準41~153)、尿素窒素37 mg/dL、クレアチニン1.0 mg/dL、血糖280 mg/dL、HbA1c8.3 %(基準4.9~6.0)、総コレステロール237 mg/dL、Na 145 mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 103 mEq/L。CRP 9.6 mg/dL。
この患者で認められる身体所見はどれか。
- ⑴ 眼球結膜の黄染総ビリルビンは軽度上昇にとどまり、眼球結膜の黄染は考えにくいです。
- ⑵ くも状血管腫くも状血管腫は肝硬変などでみられる所見で、熱傷では生じません。
- ⑶ 頸静脈の怒張循環血液量が減少しており、頸静脈はむしろ虚脱します。
- ⑷ 毛細血管再充満時間延長熱傷による循環血液量減少で末梢循環が低下し、CRTが延長します。
- ⑸ ばち指ばち指は慢性の低酸素などで生じ、急性の熱傷ではみられません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑷です。高齢者が陰部から両下肢・足底にかけて広範囲のⅢ度熱傷を負っており、熱傷面積は体表面積の約30〜40%に及ぶと考えられます。広範囲熱傷では毛細血管透過性の亢進により血漿成分が血管外へ漏出し、循環血液量が減少する熱傷ショックを来します。本例も頻脈、血圧低下傾向、Ht上昇(血液濃縮)を認め、末梢循環不全を反映して毛細血管再充満時間が延長していると考えられます。初期輸液による循環管理が重要です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成