62 歳の男性。心肺停止状態で救急搬入された。約1 週間前から感冒様症状があり、…
62 歳の男性。心肺停止状態で救急搬入された。約1 週間前から感冒様症状があり、自宅近くの診療所で治療をうけていた。午前8 時ごろ散歩に出たところ、自宅前で意識消失した。一緒にいた家族が救急車を要請し、心肺蘇生を行っていた。救急隊の接触時には心室細動で、除細動を試みるも効果はなく、病院到着時も心室細動であった。救急外来で気管挿管を行い、カテーテル検査室に移動して、緊急で経皮的心肺補助〈PCPS〉により循環動態を維持した。心エコー検査では、左室壁はやや浮腫状で、ほぼ無収縮であった。冠動脈造影検査で冠動脈に有意狭窄を認めず、心筋生検を行い、ICU へ入室となった。血液所見:Hb 12.3 g/dL、白血球11,800、血小板32 万。血液生化学所見:総ビリルビン1.4 mg/dL、AST 1,254U/L、ALT 281 U/L、LD 2,390 U/L(基準124~222)、CK 29,099 U/L(基準59~248)、尿素窒素39 mg/dL、クレアチニン1.4 mg/dL、Na 131 mEq/L、K 4.4mEq/L。BNP 1,824 pg/mL(基準18.4 以下)、心筋トロポニンT 3,240 ng/mL(基準0.01 以下)。CRP 5.8 mg/dL。最も考えられる疾患はどれか。
- ⑴ 急性心筋炎感冒様症状の先行、壁の浮腫と高度の収縮低下、冠動脈正常から劇症型心筋炎です。
- ⑵ 急性心膜炎心膜炎では心嚢液貯留がみられ、高度の左室収縮不全は通常来しません。
- ⑶ 急性心筋梗塞冠動脈造影で有意狭窄がなく、急性心筋梗塞は否定的です。
- ⑷ 肥大型心筋症肥大型心筋症では左室壁は肥厚しますが、浮腫状で無収縮となるのは典型的ではありません。
- ⑸ たこつぼ心筋症たこつぼ心筋症は心尖部の無収縮と心基部の過収縮が特徴で、精神的ストレスなどが誘因です。
解説
正解は⑴です。1週間前の感冒様症状に続いて心室細動による心停止を来し、心エコーで左室壁の浮腫状肥厚とほぼ無収縮、冠動脈造影で有意狭窄がないことから、劇症型心筋炎が最も考えられます。トロポニンTやCKの著明な上昇とCRP上昇は心筋の炎症と壊死を示します。ウイルス感染が主な原因で、PCPS(VA-ECMO)などの機械的循環補助で心機能の回復を待ちます。確定診断には心筋生検が有用です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成