45 歳の男性。記憶がないことを主訴に妻とともに来院した。妻によると、昨日までは…
45 歳の男性。記憶がないことを主訴に妻とともに来院した。妻によると、昨日までは特に変わったこともなく、今朝も普段通りに出勤したという。午前10 時ごろ、会社とは反対の方向にあるA 駅で立ちすくんでいるところを駅員に保護され、所持していた運転免許証から住所が特定され妻が迎えに行ったという。妻によると既往歴と家族歴に特記すべきことはないが、最近残業が多く、会社でミスが多いと悩んでいたという。意識は清明であるが、20 歳ごろ以降の記憶がないという。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは30 点(30 点満点)。血液所見、血液生化学所見、頭部単純MRI、脳波検査および脳脊髄液検査で特記すべきことはなかった。診断はどれか。
- ⑴ 認知症認知症は緩徐に進行し、HDS-Rは30点満点で画像も正常のため否定的です。
- ⑵ 統合失調症幻覚や妄想などの陽性症状はみられず、統合失調症は考えにくいです。
- ⑶ 解離性障害〈解離症〉ストレス後の突然の自伝的記憶喪失と遁走で、器質的異常がなく解離性障害です。
- ⑷ 境界性パーソナリティ症対人関係や感情の不安定さなどの長期的な人格傾向は示されていません。
- ⑸ 心的外傷後ストレス障害PTSDには生命を脅かす外傷体験と再体験症状が必要で、本例は該当しません。
解説
正解は⑶です。過労と仕事上の悩みというストレスの後、突然自宅や職場とは異なる場所へ移動しており、20歳以降の自伝的記憶を失っています。意識は清明で認知機能検査は満点、MRI、脳波、髄液検査にも異常がないことから、器質的疾患は否定的です。心理的ストレスを契機とした解離性健忘(解離性遁走を伴う)と考えられます。治療は安全な環境の確保と精神療法で、記憶は回復することが多いとされます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp260424-01.html)を加工して作成