入院して治療を行ったが、呼吸状態が悪化し、マスク5 L/分の酸素投与でもSpO2…
82 歳の女性。発熱と呼吸困難を主訴に来院した。現病歴 : 3 日前から発熱と乾性咳嗽が出現、2 日前から労作時の呼吸困難も出現したため受診した。同居している家族を含め、周囲で上気道炎症状のある人はいない。既往歴 : 2 年前から特発性間質性肺炎と診断され、3 か月前の急性増悪の際にステロイドパルス療法が行われ、その後漸減しながら現在プレドニゾロン25 mg/日と抗線維化薬を内服している。その他の薬は副作用のため中断している。生活歴 : 喫煙歴はない。自宅で夫と息子夫婦の4 人暮らし。ADL は自立。毎日近所を散歩している。室内で犬を1 匹飼っている。3 か月前にインフルエンザワクチンと新型コロナウイルスワクチンを接種している。家族歴 : 父が82 歳時に肺癌で死亡。現 症 : 意識は清明。身長155 cm、体重60 kg。体温37.8 ℃。脈拍84/分、整。血圧130/76mmHg。呼吸数28/分。SpO2 88 %(room air)。心音に異常は認めない。呼吸音は両側下肺背側にfine crackles を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖3 +、ケトン体2 +、潜血1 +。血液所見:赤血球412 万、Hb 12.3 g/dL、Ht 38 %、白血球11,400(分葉核好中球89 %、単球1%、リンパ球10 %)、血小板24 万、D ダイマー1.0 μg/mL(基準1.0 以下)。血液生化学所見:総蛋白5.1 g/dL、アルブミン3.0 g/dL、総ビリルビン0.7 mg/dL、AST 25 U/L、ALT 21 U/L、LD 549 U/L(基準124~222)、ALP 39 U/L(基準38~113)、γ-GT 30 U/L(基準9 ~32)、尿素窒素17 mg/dL、クレアチニン0.5 mg/dL、血糖144 mg/dL、HbA1c 6.1 %(基準4.9~6.0)、Na 135 mEq/L、K 3.9 mEq/L、Cl 94 mEq/L、KL-6 4,482 U/mL(基準500 未満)。免疫血清学所見:CRP 4.7 mg/dL、β-D-グルカン210 pg/mL(基準10 以下)。インフルエンザウイルス迅速抗原検査陰性、新型コロナウイルス〈SARS-CoV-2〉抗原定性検査陰性、サイトメガロウイルス抗原陰性。胸部エックス線写真(別冊No. 9A)と胸部単純CT(別冊No. 9B)とを別に示す。
入院して治療を行ったが、呼吸状態が悪化し、マスク5 L/分の酸素投与でもSpO2 が90 % を維持できない状態となり、本人の呼吸困難も悪化した。終末期における医療について、患者本人から侵襲的な処置を希望しないこと、「苦しくないように、痛くないようにして欲しい」という希望があることを家族が聞いており、家族から本人の意思を尊重して治療を進めて欲しいと話があった。また今回の入院時にも、同様のことを本人が主治医をはじめ医療スタッフに話しており、診療録にもこの意向が記載されていた。オピオイドの投与とともに行うのはどれか。
- ⑴ 気管切開気管切開は侵襲的な処置で、本人の希望に反します。
- ⑵ 気管挿管気管挿管は侵襲的な処置で、本人の希望に反します。
- ⑶ 輪状甲状靱帯切開輪状甲状靱帯切開は緊急の気道確保の手段で、本人の希望に反します。
- ⑷ ネーザルハイフローによる酸素投与非侵襲的に高流量の酸素を投与でき、苦痛の緩和を望む本人の意向に沿った対応です。
- ⑸ ECMO〈Extracorporeal membrane oxygenation〉ECMOは高度に侵襲的な治療で、本人の希望に反します。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑷です。本人は侵襲的な処置を希望せず、苦痛の緩和を望んでおり、その意向は家族や医療スタッフにも伝えられ、診療録にも記載されています。本人の意思を尊重し、気管挿管や気管切開、ECMOなどの侵襲的な処置は行わず、オピオイドで呼吸困難を緩和しながら、非侵襲的に高流量の酸素を投与できるネーザルハイフローを用いるのが適切です。ネーザルハイフローは会話や食事が可能で、患者の快適性を保ちながら酸素化の改善と呼吸仕事量の軽減が期待できます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成