まず行うべき対応はどれか。
64 歳の女性。嘔吐を主訴に来院した。現病歴 : 今朝、悪心で目が覚め、黒色物を嘔吐したため、夫とともに受診した。既往歴 : 40 歳時に胆囊炎で手術。Parkinson 病でレボドパ〈L-dopa〉を内服している。2 週間前に生じた右大腿部痛で、NSAID を内服している。52 歳で閉経。生活歴 : 夫と2 人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。家族歴 : 母がうつ病にて投薬治療中。現 症 : 意識は清明。身長160 cm、体重48 kg。体温36.4 ℃。脈拍108/分、整。血圧108/60mmHg。呼吸数20/分。SpO2 97 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で右季肋部に小手術痕を認める。腸雑音は亢進している。上腹部正中に軽度の圧痛を認める。肝・脾を触知しない。検査所見 : 血液所見:赤血球385 万、Hb 11.7 g/dL、Ht 35 %、白血球8,500、血小板22 万、PT-INR 1.1(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白6.2 g/dL、アルブミン3.8 g/dL、総ビリルビン1.0 mg/dL、AST 28 U/L、ALT 23 U/L、LD 214 U/L(基準124~222)、ALP 41 U/L(基準38~113)、γ-GT 10 U/L(基準9 ~32)、CK 83 U/L(基準41~153)、尿素窒素25 mg/dL、クレアチニン0.6 mg/dL、尿酸4.6 mg/dL、血糖112 mg/dL、HbA1c 5.8 %(基準4.9~6.0)、Na 137 mEq/L、K 4.1 mEq/L、Cl 98 mEq/L。
まず行うべき対応はどれか。
- ⑴ 輸液頻脈を伴う上部消化管出血であり、まず細胞外液の輸液で循環血液量を補います。
- ⑵ 輸血Hb 11.7 g/dLで、現時点ではまず輸液を行い、輸血は経過をみて判断します。
- ⑶ 抗菌薬投与感染症を示す所見はなく、抗菌薬の投与は不要です。
- ⑷ アトロピン投与アトロピンは徐脈に用いる薬剤で、頻脈を伴う本例には適しません。
- ⑸ ノルアドレナリン投与ノルアドレナリンは輸液で血圧が維持できない場合に用いるもので、まず輸液を行います。
解説
正解は⑴です。NSAIDsを内服中の高齢女性が黒色物(コーヒー残渣様の吐物)を嘔吐し、頻脈(108/分)を伴い、尿素窒素の上昇(25 mg/dL、BUN/Cr比の上昇)もあることから、NSAIDs潰瘍などによる上部消化管出血が考えられます。頻脈は循環血液量減少の徴候であり、まず太い静脈路を確保して細胞外液の輸液を行い、循環動態を安定させます。Hbは11.7 g/dLで現時点では輸血の必要性は低く、輸液に反応しなければ輸血を検討します。その後、緊急内視鏡を行います。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成