78 歳の男性。右臀部周辺の痛みを主訴に来院した。1 年前から前立腺癌に対しホル…
78 歳の男性。右臀部周辺の痛みを主訴に来院した。1 年前から前立腺癌に対しホルモン療法施行中である。3 日前に旅行から帰宅後に右臀部の痛みと腫れを自覚した。痛みは徐々に右臀部全般に広がった。意識は清明。体温36.2 ℃。脈拍96/分、整。血圧102/68mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98 %(room air)。右大腿から腰部にかけて紫斑を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。右臀部は硬く腫脹し、圧痛を認める。血液所見:赤血球391 万、Hb 9.8 g/dL、Ht 32 %、白血球7,950(好中球72 %、好酸球1 %、単球9%、リンパ球18 %)、血小板35 万。PT-INR 1.0(基準0.9~1.1)、APTT 72.4 秒(基準対照32.2)、フィブリノゲン433 mg/dL(基準186~355)、FDP 14 μg/mL(基準10 以下)。血液生化学所見:総蛋白7.4 g/dL、AST 24 U/L、ALT 40 U/L、LD 218 U/L(基準124~222)、尿素窒素10 mg/dL、クレアチニン0.7 mg/dL。CRP 0.8 mg/dL。臀部痛の原因はどれか。
- ⑴ 筋肉内出血APTTの単独延長と広範な紫斑、貧血から、後天性血友病による筋肉内出血が考えられます。
- ⑵ 坐骨神経痛坐骨神経痛では臀部の腫脹や紫斑、凝固異常は説明できません。
- ⑶ 腸腰筋膿瘍腸腰筋膿瘍では発熱や炎症反応の著明な上昇がみられますが、本例ではCRPは低値です。
- ⑷ 大腿骨頭壊死症大腿骨頭壊死症は股関節痛をきたしますが、紫斑や凝固異常は説明できません。
- ⑸ 変形性股関節症変形性股関節症は慢性の股関節痛で、急性の腫脹や紫斑は説明できません。
解説
正解は⑴です。高齢男性に、明らかな外傷なく臀部の有痛性の腫脹と広範な紫斑が出現し、貧血を伴っています。凝固検査ではPT正常、APTTのみが著明に延長し、出血症状が新たに出現していることから、後天性血友病A(第Ⅷ因子に対するインヒビター)が疑われます。後天性血友病は高齢者や悪性腫瘍、自己免疫疾患のある人に生じ、皮下出血や筋肉内出血が特徴です。臀部の痛みと硬い腫脹は筋肉内出血によるものと考えられ、APTTの混合試験で診断を進めます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成