この患者の前腕から静脈投与を行う。静脈留置針の自己抜去を防ぐために行う対応で適切…
75 歳の女性。呼吸困難を主訴に救急車で搬入された。現病歴 : 8 年前に認知症と診断され、現在は直前の出来事も記憶していない。1週間前から咳嗽が増加し、市販の咳止めを内服したが改善しなかった。昨夜から呼吸困難が強くなり、喘鳴が家族にも聴取できるようになった。かかりつけ医に処方されていた吸入薬を使用したが今朝になっても改善しないため、家族が救急車を要請した。既往歴 : 認知症のほかに、40 歳時から気管支喘息で発作時の吸入薬を処方されている。生活歴 : 喫煙歴と飲酒歴はない。家族歴 : 父が80 歳時に脳梗塞で死亡。母が65 歳時に胃癌で死亡。現 症 : ベッド上で仰臥位となっている。会話は可能だが見当識に関連する質問には回答できない。身長143 cm、体重46 kg。体温36.6 ℃。心拍数92/分、整。血圧146/68mmHg。呼吸数20/分。SpO2 99 %(マスク5 L/分 酸素投与下)。頸静脈の怒張を認めない。口腔内と咽頭とに異常を認めない。両側全肺野で呼気時にwheezes を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢に浮腫を認めない。検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球452 万、Hb 13.8 g/dL、Ht 41 %、白血球5,440(好中球43 %、好酸球12 %、好塩基球1 %、単球6 %、リンパ球38 %)、血小板21 万。血液生化学所見:総蛋白7.3 g/dL、アルブミン3.7 g/dL、総ビリルビン0.5 mg/dL、直接ビリルビン0.1 mg/dL、AST 19 U/L、ALT 10 U/L、LD 230 U/L(基 準124~222)、CK 40 U/L(基準41~153)、尿素窒素10 mg/dL、クレアチニン0.6 mg/dL、尿酸5.3 mg/dL、血糖98 mg/dL、Na 139 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 106 mEq/L、Ca 8.9 mg/dL、P 4.0 mg/dL。CRP 0.4 mg/dL。動脈血ガス分析(マスク5 L/分酸素投与下):pH 7.46、PaCO2 31 Torr、PaO2 92 Torr、HCO3⁻21 mEq/L。心電図で異常を認めない。胸部エックス線写真で異常を認めない。
この患者の前腕から静脈投与を行う。静脈留置針の自己抜去を防ぐために行う対応で適切なのはどれか。
- ⑴ 薬剤は持続点滴で投与する。持続点滴は留置時間が長くなり、自己抜去の機会を増やすため適切ではありません。
- ⑵ 両上肢を抑制帯で固定する。身体抑制は最後の手段であり、まずは他の方法で予防を図ります。
- ⑶ できるだけ太い留置針を用いる。太い留置針は苦痛や違和感を増し、自己抜去を誘発しやすくなります。
- ⑷ 夜間も患者周囲の照明をできるだけ明るくする。夜間の明るい照明は睡眠を妨げ、せん妄を悪化させるおそれがあります。
- ⑸ 患者から見えないように寝衣の袖の中に点滴ルートを通す。点滴ルートを寝衣の袖の中に通して見えないようにすると、自己抜去の予防に有効です。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑸です。認知症の患者は、点滴の必要性を理解・記憶できず、違和感から留置針を自己抜去してしまうことがあります。点滴ルートを寝衣の袖の中に通して患者の視界に入らないようにすると、気になって触ることが減り、自己抜去の予防に有効です。不必要な持続点滴を避けて間欠的投与にすること、抑制帯の使用は最小限にとどめることが基本です。夜間の過度な照明はせん妄を悪化させます。太い留置針は苦痛を増すため、適切な太さのものを用います。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成