集中治療が継続されたが患者は入院4 日目に死亡した。家族に病理解剖について説明し…
58 歳の男性。発熱と意識障害のため救急車で搬入された。現病歴 : 昨日38.0 ℃の発熱があったため仕事を休み、市販の解熱鎮痛薬を内服して自宅で様子をみていた。今朝はベッドで横になったままで呼びかけに反応がなかったため、家族が救急車を要請した。既往歴 : 21 歳時に交通外傷のため左腎臓と脾臓を摘出した。生活歴 : 会社員で事務作業が主体。喫煙歴はない。飲酒はビール350 mL/日を週2 回。52 歳の妻、20 歳台の息子2 人と4 人暮らし。ペットは飼育していない。ワクチン接種歴は確認できない。家族歴 : 父は78 歳時に心筋梗塞で死亡。同居している家族に特記すべきことはない。現 症 : 意識レベルはJCSⅢ-200。身長170 cm、体重62 kg。体温38.8 ℃。心拍数128/分、整。血圧76/52mmHg。呼吸数30/分。SpO2 91 %(リザーバー付マスク10 L/分 酸素投与下)。皮膚は湿潤で著明な発汗を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めず、頭頸部にはその他の異常も認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝を触知しない。左側腹部に手術痕を認める。両側足趾に暗紫色の色調変化を認める。下腿に浮腫を認めない。検査所見 : 血液所見:赤血球490 万、Hb 13.2 g/dL、Ht 39 %、白血球2,000(骨髄球5 %、後骨髄球13 %、桿状核好中球38 %、分葉核好中球41 %、好酸球0 %、好塩基球0 %、単球1 %、リンパ球2 %)、血小板6.2 万、PT-INR 1.4(基準0.9~1.1)、フィブリノゲン426 mg/dL(基準186~355)、D ダイマー30 μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白5.9 g/dL、アルブミン2.8 g/dL、総ビリルビン2.7 mg/dL、直接ビリルビン1.8 mg/dL、AST 197 U/L、ALT 149 U/L、LD 351 U/L(基準124~222)、ALP 109 U/L(基準38~113)、γ-GT 60 U/L(基準13~64)、アミラーゼ44 U/L(基準44~132)、CK 460 U/L(基準59~248)、尿素窒素40 mg/dL、クレアチニン2.1 mg/dL、血糖98 mg/dL、Na 130 mEq/L、K 3.4 mEq/L、Cl 101 mEq/L、Ca 7.5 mg/dL、乳酸28 mg/dL(基準5 ~20)。CRP 30 mg/dL。動脈血ガス分析(リザーバー付マスク10 L/分 酸素投与下):pH 7.33、PaCO2 28 Torr、PaO2 84 Torr、HCO3⁻18 mEq/L。血液培養採取と同時に静脈路を確保し、輸液と抗菌薬投与を開始したが、血圧が低下した状態が続いている。
集中治療が継続されたが患者は入院4 日目に死亡した。家族に病理解剖について説明したところ承諾され、実施することとなった。正しいのはどれか。
- ⑴ 解剖終了後は遺体を家族に返還する。病理解剖の終了後、遺体は縫合・清拭して遺族に返還します。
- ⑵ 解剖に使用した器具は全て廃棄する。解剖に用いた器具は洗浄・滅菌して再使用でき、すべて廃棄する必要はありません。
- ⑶ 解剖を実施したことを警察に届け出る。異状死ではない病理解剖について、警察に届け出る必要はありません。
- ⑷ 解剖に関わった医療従事者は予防抗菌薬を内服する。標準予防策で対応し、医療従事者が予防的に抗菌薬を内服することは通常ありません。
- ⑸ 死亡診断書は病理解剖報告書が完成した後に発行する。死亡診断書は解剖報告書の完成を待たずに発行し、必要があれば後に追加報告します。
解説
正解は⑴です。病理解剖は遺族の承諾を得て、死体解剖保存法に基づいて行われ、死因の究明や治療効果の検証に役立ちます。解剖終了後は遺体を丁寧に縫合・清拭して遺族に返還します。解剖器具は洗浄・滅菌して再使用し、すべてを廃棄するわけではありません。異状死でない病理解剖を警察へ届け出る必要はありません。医療従事者は標準予防策を徹底しますが、予防的な抗菌薬内服は通常行いません。死亡診断書は解剖の結果を待たずに発行します。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成