この患者の神経診察でみられるのはどれか。
68 歳の男性。歩行困難を主訴に来院した。2 年前から歩き方が酔っ払っているようだと家族に指摘されている。同時期から歩行時にふらついてしまうため、足を広げて歩くようになった。暗いところと明るいところで歩行のふらつきに違いはない。椅子からの起き上がりは可能だが、6 か月前に起立時にふらついて転びそうになったことがある。階段を昇ることはできるが、階段を降りる際には手すりを使うようになった。書字動作がしにくくなり、線をまっすぐ引けなくなった。箸は握れて茶碗も持てるが、目的の場所に上手く箸を運べなくなった。徐々に話し方が酔っ払った様に不明瞭になった。歩行困難が進行し、2 か月前に方向転換の際に転倒した。四肢のしびれ及び感覚の鈍さは自覚していない。徐々に症状が増悪するため受診した。既往歴 : 特記すべきことはない。生活歴 : 喫煙歴と飲酒歴はない。家族歴 : 特記すべきことはない。現 症 : 意識は清明。身長168 cm、体重60 kg。体温36.1 ℃。脈拍64/分、整。血圧128/68mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球510 万、Hb 14.2g/dL、白血球8,300、血小板20 万。血液生化学所見:総蛋白7.8 g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 26 U/L、ALT 20 U/L、LD 180 U/L(基準124~222)、γ-GT45 U/L(基準13~64)、CK 70 U/L(基準59~248)、尿素窒素19 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、血糖92 mg/dL、HbA1c 5.0 %(基準4.9~6.0)、総コレステロール152 mg/dL、トリグリセリド50 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.0mEq/L。心電図で異常を認めない。胸部、腹部および頸椎エックス線写真で異常を認めない。
この患者の神経診察でみられるのはどれか。
- ⑴ Gowers 徴候陽性近位筋の筋力低下を示す所見で、小脳性運動失調ではみられません。
- ⑵ Romberg 徴候陽性深部感覚障害による失調の所見で、小脳性運動失調では陰性です。
- ⑶ Chaddock 反射陽性錐体路障害の所見で、本例ではみられません。
- ⑷ 鼻指鼻試験拙劣小脳性運動失調による測定障害で、拙劣となります。
- ⑸ 固定姿勢保持困難〈asterixis〉肝性脳症などの代謝性脳症でみられる所見です。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑷です。この患者は小脳性運動失調と考えられるため、神経診察では鼻指鼻試験で指先が目標からずれる測定障害や、目標に近づくほど振戦が強まる企図振戦がみられ、拙劣となります。ほかに踵膝試験の拙劣、反復拮抗運動不能も認めます。Romberg徴候は閉眼で動揺が増す深部感覚障害の所見で、小脳性失調では開眼でも閉眼でも動揺し陰性です。Gowers徴候は近位筋力低下、Chaddock反射は錐体路障害、asterixisは代謝性脳症の所見です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp240424-01.html)を加工して作成