56 歳の男性。数年前から頸椎椎間板ヘルニアを指摘されていた。昨日、自宅で転倒し…
56 歳の男性。数年前から頸椎椎間板ヘルニアを指摘されていた。昨日、自宅で転倒して突然に麻痺を呈した。頸髄損傷と診断され、主な損傷部位以下の機能はASIA 機能障害尺度[ASIA Impairment Scale〈AIS〉]でB である。頸椎MRI(別冊No. 1)を別に示す。正しいのはどれか。
- ⑴ 横隔膜の麻痺がある。横隔膜は第3〜5頸髄節から出る横隔神経が支配します。本例は肩をすくめる動作が保たれる高位で自発呼吸も維持されており、横隔膜麻痺があるとは考えられません。
- ⑵ 肩をすくめることができる。僧帽筋上部と肩甲挙筋は第3〜4頸髄節と副神経の支配で、損傷高位より上位にあたります。したがって機能が残り、肩をすくめる動作は可能です。
- ⑶ 頸部の感覚機能障害を認める。頸部の感覚は第2〜4頸髄節が担い、損傷高位より上位なので障害されません。「頸髄損傷だから頸の感覚も鈍い」と考えると誤ります。
- ⑷ スプーンを握り食事ができる。スプーンを握るには第7〜8頸髄節が支配する手指屈筋群が必要です。B は損傷部位以下の運動機能が完全に失われた状態なので、把持はできません。
- ⑸ 棚の上の物をとることができる。棚の上の物をとるには三角筋(第5頸髄節)などの肩関節を挙上する筋が要りますが、これらは損傷高位より下位にあり運動完全麻痺のため使えません。
解説
正答は⑵です。肩をすくめる動作は僧帽筋上部と肩甲挙筋が担い、これらは第3〜4頸髄節と副神経の支配で損傷高位より上位にあたるため機能が残ります。ASIA 機能障害尺度のB は「損傷部位以下の運動機能は完全に失われ、感覚だけが一部残る」状態を指しますので、三角筋(第5頸髄節)による上肢の挙上や、手指屈筋(第7〜8頸髄節)によるスプーンの把持はできません。頸部の感覚は損傷高位より上位が担うため障害されず、自発呼吸が保たれている点からも横隔膜麻痺は考えにくいです。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-08_09.html)を加工して作成