問4 下線部分⒞ライオンが私たちに噛みついたりしないように,ライオンには檻の中に…
生徒たちは,「公共」の学習の始まりとして,「公共的な空間」をつくる私たちの生き方や考え方 について学んでいる。問1 ~問5 に答えよ。 1 生徒Xと生徒Yが,「公共」の授業のあとに会話している。 会話文 生徒X:今日の授業では,青年期のことを学習したね。 生徒Y:そうだったね。最近,⒜人間関係をどう構築していけばよいか思い悩んでしまうとき があるんだけど,そういう悩みが自我の形成につながると聞いて,少し安心したよ。 生徒X:そうなんだ。実は最近,自信をなくしているんだよね。スポーツや勉強も,まわりの 友達の方ができる気がして。「自分は何をやってもダメだなぁ」って感じてしまう。授 業の感想にも書いたんだけど,自分が⒝生きる意味って何だろうと考えてしまうとき があるんだ。 生徒Y:うーん,難しい。答えはあるのかなぁ。次回の授業のテーマは,「古今東西の先哲の 思想を手がかりに,人間としての生き方を考えよう」だから,何かヒントになること があるといいよね。 先 生:今日の授業では,みなさんの学校がある市で計画が進んでいる新しい道路建設をめぐ る様々な意見を取り上げます。それぞれの意見の背後には,考え方の違いがありま す。二人に,意見を述べてもらいましょう。 生徒X:私は,ある行為の結果が人々の幸福の総量を増すかどうかが,その行為の正しさを判 断する決め手になると考えます。今回,新しい道路を作ることで,市内の渋滞が解消 されます。そのため多数の人の通勤・通学の時間が短縮され,自分の好きなことをす るのに使える時間が増えます。新しい道路を作ることは,このように多数の人に幸福 をもたらすので賛成です。 生徒Y:行為の動機となる公正を重視する私の立場からみると,幸福の総量が増すだけでは, 新しい道路建設計画をめぐる議論には不十分だと思います。新しい道路を作ることに よる効果を考える前に,この道路建設計画が公正という考え方にのっとっているかど うかを,私たちは慎重に検討する必要があると思います。 先 生:次に,他の人が書いたカードを紹介します。 カードA 新しい道路を作ることで,今住んでいる場所 から立ち退きをしなければならない人がでて くる。そういった不利な立場にある人のこと を考慮しなければならない。 カードB いったん今の自分の立場を離れる必要があ る。そして,自分がどんな立場であったとし ても納得できるような適正な判断をするべき だ。 カードC 新しい道路を作ることによる環境悪化の影響 を,道路周辺の住民のみが被るのは公平では ない。よりよい環境で生活をすることは,誰 にとっても実現することが望ましい。 カードD 市の調査では,住民の70 %が新しい道路建 設計画に賛成している。このことは,新しい 道路を作ることによって生じる不利益より, 利益が大きいことの一つの根拠となる。 先 生:様々な意見の背後にある考え方を吟味することが大切ですね。では,それぞれの考え 方をみんなで検討していきましょう。 料2 を読みながら会話している。 資料2 ちがう個性を持った人々が,みんな幸せに暮らしていくためには,なにが必要? ま ず,ルールを作らないといけません。様々な公共サービスも必要です。これらをだれかに やってもらわないといけませんね。 …百獣の王ライオンなら,強くて頼りになりそうです。私たちが人間らしく生活できる ように,ライオンにお願いして,いろいろ取り仕切ってもらいましょう。でも,ちょっと 心配なこともありませんか? …ライオンは強いうえに,わがままなことがあります。暴れ出したら手がつけられませ ん。歴史を振り返ると,ライオンが私たちに襲いかかることがよくありました。 …そんなことにならないように,私たちとライオンとの間で,約束を交わしておきま しょう。「ライオンには,檻の中にいてもらう」という約束です。ライオンには,その約束 事を書いた紙にサインしてもらい,契約書を作りましょう。 …⒞ライオンが私たちに噛 みついたりしないように,ライオンには檻の中にいてもらい ます。いくらライオンが偉くても,檻から出てはいけません。 (楾大樹『檻の中のライオン』により作成) 会話文 生徒W:この資料2 では,国家権力をライオンに,ライオンを閉じ込める檻を憲法に,それぞ れたとえているよ。 生徒X:昔は,王様などが絶対的な権力者として自分勝手な政治を行いがちだったんだよね。 そういう政治によって人々の自由が不当に奪われないように,権力を持つ人もまた法 に従わなくてはならない,という考え方が広まった。 生徒Y:一部の人に権力が集中すると人権が侵害されるおそれがあることも,歴史で学んだな。 先 生:「檻」である憲法が権力の行使のあり方を定めることで,国民の基本的人権を保障して いるんだったね。ところで,日本国憲法の基本的原則の一つに国民主権がある。これ は君主が絶対的な権力者だった時代とは違う点だ。このことを踏まえると,資料2 の ライオンのイメージとはちょっと違う見方ができないかな。 生徒Z:そうか,現代の国家では,国家権力の行使は主権者である国民の意思にもとづいてい ますよね。そう考えると,ライオンが暴れて私たちに襲いかかる心配はしなくてい い,つまり,国家権力が暴走することはないはずです。 先 生:暴走かどうかはともかく,国家権力の行使が人権を侵害するおそれはなくなったわけ ではないよ。民主主義の国では,多数派の願いが国民の意思ということになりがちだ よね。でも,多くの人が望んだからといって,個人の権利や自由を犠牲にするような 決定を安易にしてはいけない。他の誰かの権利や自由を侵害しない限り,一人ひとり が自分らしく幸福に生きることをお互いに認め合わないとね。 生徒Z:なるほど。 C ことが憲法の役割なんですね。
問4 下線部分⒞ライオンが私たちに噛みついたりしないように,ライオンには檻の中にいても らいます。いくらライオンが偉くても,檻から出てはいけませんは,近代国家の基本的原理 をたとえたものである。資料2 と会話文の趣旨を踏まえ,この原理として適切なものを,次 の1 ~4 のうちから一つ選べ。
- 1 公共の福祉公共の福祉は、人権どうしがぶつかるときの調整の原理です。
- 2 立憲主義憲法で国家権力に枠をはめるという、立憲主義の考え方にあたります。
- 3 三権分立三権分立は権力を分けて抑制させる仕組みで、檻の例えとは別です。
- 4 平和主義平和主義は戦争の放棄に関わる原則で、この例えには当たりません。
この問題は問題の図(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は2です。ライオンを国家権力、檻を憲法にたとえた話です。国家権力が人権を侵すことのないように、憲法によってあらかじめ枠をはめておくという考え方を立憲主義といいます。公共の福祉は人権どうしがぶつかるときの調整の原理、三権分立は権力を三つに分ける仕組み、平和主義は戦争を放棄する原則なので、この例えが表す原理には当たりません。
出典:文部科学省ホームページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/kakomon/1411255_00013.htm)を加工して作成