この患者の血液検査で高値と予想されるのはどれか。2 つ選べ。
76 歳の男性。強いふらつきを主訴に救急車で搬入された。現病歴 : 3 か月前から倦怠感やふらつきが目立ち、寒がるようになった。動作緩慢、便秘および経口摂取減少も出現したが加齢によるものと本人が思い様子をみていた。本日、倦怠感とふらつきが増強したため妻が救急車を要請した。既往歴 : 1 年4 か月前に中咽頭癌に対し化学放射線療法が施行され、6 か月ごとに定期通院中。生活歴 : 70 歳まで会社役員。妻と2 人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は日本酒1 ~2 合/日を40 年間。家族歴 : 弟が慢性肝炎。現 症 : 意識は清明。身長165 cm、体重60 kg。体温35.8 ℃。心拍数48/分、整。血圧98/68mmHg。呼吸数20/分。SpO2 97 %(room air)。皮膚は乾燥しているが、色素沈着は認めない。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は乾燥しているが、咽頭発赤は認めない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球362 万、Hb 11.7 g/dL、Ht 35 %、白血球4,100、血小板14 万。血液生化学所見:総蛋白6.3 g/dL、総ビリルビン0.5 mg/dL、AST 34 U/L、ALT 32 U/L、LD 220 U/L(基準124~222)、尿素窒素15 mg/dL、クレアチニン1.1 mg/dL、血糖92 mg/dL、総コレステロール288 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 2.8 mEq/L、Cl 101 mEq/L、TSH 98 μU/mL(基準0.2~4.0)、FT31.8 pg/mL(基準2.3~4.3)、FT40.1 ng/dL(基準0.8~2.2)、コルチゾール12.4 μg/dL(基準5.2~12.6)。CRP 0.1 mg/dL。心電図は洞性徐脈でST-T 変化を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比48 %。
この患者の血液検査で高値と予想されるのはどれか。2 つ選べ。
- ⑴ ALP甲状腺機能低下症では骨代謝が低下し、ALPは低値傾向となります。
- ⑵ アルブミンアルブミンは甲状腺機能低下症で上昇する検査項目ではありません。
- ⑶ クレアチンキナーゼ甲状腺機能低下症によるミオパチーで、クレアチンキナーゼが上昇します。
- ⑷ LDL コレステロールLDL受容体の発現低下により、LDLコレステロールが上昇します。
- ⑸ 抗TSH 受容体抗体〈TRAb〉TRAbはBasedow病で陽性となる抗体で、本例では上昇しません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑶と⑷です。甲状腺機能低下症では、骨格筋の代謝が低下してミオパチーをきたし、筋からの逸脱酵素であるクレアチンキナーゼ(CK)が上昇します。また肝臓のLDL受容体の発現が低下してLDLの取り込みが減るため、LDLコレステロールが上昇し、本例でも総コレステロールが288 mg/dLと高値です。ALPは骨代謝の低下により低めとなることが多く、アルブミンは上昇しません。TRAbはBasedow病で陽性となる抗体で、放射線照射後の甲状腺機能低下症では上昇しないと考えます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成