32 歳の女性。甲状腺の検査を希望して来院した。5 か月前に第2 子を出産した。…
32 歳の女性。甲状腺の検査を希望して来院した。5 か月前に第2 子を出産した。妊娠前に受けた検査で抗甲状腺ペルオキシダーゼ〈TPO〉抗体強陽性であったため、妊娠期間中にも定期的に甲状腺ホルモン検査を受けていたが、これまでに甲状腺機能の異常を指摘されたことはなく自覚症状もない。体温36.7 ℃。脈拍92/分、整。血圧126/86mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。びまん性のやや硬い甲状腺腫を触れるが圧痛はない。胸腹部に異常を認めない。尿所見:蛋白(-)、糖(±)、ケトン体(-)。血液所見:赤血球420 万、Hb 12.3 g/dL、Ht 40 %、白血球6,700、血小板21 万。血液生化学所見:アルブミン4.0 g/dL、AST 13 U/L、ALT 15 U/L、クレアチニン0.4 mg/dL、TSH 0.02 μU/mL 未満(基準0.4~4.0)、FT42.3 ng/dL(基準0.8~1.8)。CRP 0.1 mg/dL。この時点での方針で正しいのはどれか。
- ⑴ 抗甲状腺薬を投与する。破壊性甲状腺中毒症ではホルモンの合成は亢進しておらず、抗甲状腺薬は無効です。
- ⑵ 甲状腺亜全摘術を行う。一過性の病態であり、甲状腺亜全摘術の適応はありません。
- ⑶ 無機ヨウ素を投与する。無機ヨウ素はホルモン合成・分泌を抑えますが、破壊性甲状腺中毒症には用いません。
- ⑷ グルココルチコイドを投与する。グルココルチコイドは亜急性甲状腺炎の疼痛などに用いますが、本例のような無痛性甲状腺炎には不要です。
- ⑸ 2 ~4 週間後に甲状腺機能を再検する。自然に軽快する破壊性甲状腺中毒症であり、2〜4週間後に甲状腺機能を再検して経過をみます。
解説
正解は⑸です。抗TPO抗体が強陽性の女性が、出産後5か月で甲状腺中毒症(TSH抑制、FT4上昇)を呈しており、甲状腺の圧痛や発熱はありません。出産後に慢性甲状腺炎を背景として生じる無痛性甲状腺炎(出産後甲状腺炎)が最も考えられます。甲状腺の破壊によりホルモンが漏れ出たもので、数週間から数か月で自然に改善し、その後一過性の甲状腺機能低下症を経て回復することが多いです。抗甲状腺薬は無効で、2〜4週間後に甲状腺機能を再検して経過を観察します。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成