行うべき対応はどれか。
30 歳の男性。左前胸部痛と呼吸困難を主訴に来院した。現病歴 : 格闘技の選手。試合中に左前胸部を蹴られ、試合会場近くの病院を受診した。既往歴 : 特記すべきことはない。生活歴 : 一人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。家族歴 : 父が大腸癌。現 症 : 来院時、意識は清明。身長180 cm、体重98 kg。体温36.4 ℃。脈拍96/分、整。血圧102/72mmHg。 呼吸数18/分。SpO2 97 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内に異常を認めない。甲状腺と頸部リンパ節とを触知しない。左前胸部に痛みを訴え、皮下出血を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察で異常を認めない。検査所見 : 血液所見:赤血球489 万、Hb 14.2 g/dL、Ht 44 %、白血球11,200。血液生化学所見:総蛋白6.9 g/dL、アルブミン4.2 g/dL、AST 36 U/L、ALT 32 U/L、LD 338 U/L(基準124~222)、尿素窒素10 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、Na 139 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 103 mEq/L。動脈血ガス分析(roomair):pH 7.43、PaCO2 43 Torr、PaO2 84 Torr、HCO3⁻28 mEq/L。胸部単純CT(別冊No. 12)を別に示す。
行うべき対応はどれか。
- ⑴ 経過観察血胸が増加し循環・呼吸状態が悪化しており、経過観察は不適切です。
- ⑵ β 遮断薬投与β遮断薬は頻脈を抑えますが、出血性ショックの代償機構を損ない危険です。
- ⑶ 気管挿管陽圧換気意識は清明で気道は保たれており、まず胸腔ドレナージで血液を排出します。
- ⑷ 胸腔ドレーン挿入胸腔ドレーンで血液を排出して肺を再膨張させ、出血量も評価できます。
- ⑸ 非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉胸腔内の血液を除去しないまま陽圧換気を行っても、根本的な改善にはなりません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑷です。外傷性血胸が増加し、呼吸状態と循環動態が悪化しているため、胸腔ドレーンを挿入して血液を排出し、肺を再膨張させます。ドレナージは呼吸状態の改善と同時に出血量の評価にも役立ちます。挿入直後に1,000 mL以上の出血がある場合や、1時間あたり200 mL以上の出血が続く場合は、開胸止血術を検討します。気管挿管や陽圧換気だけでは胸腔内の血液は除けず、本例は意識清明で、まずドレナージを優先します。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成