診察中に患者は再び意識消失し、数秒後に回復した。意識消失時の心拍数は14/分、不…
83 歳の男性。意識消失を主訴に救急車で搬入された。現病歴 : 15 年前から高血圧症で治療中。約5 年前から家族に難聴を指摘されている。3 か月前から労作や安静に無関係の動悸を自覚するようになり、通院中の診療所で心室期外収縮を指摘された。本日、自宅で意識消失し倒れたことに家族が気付き、救急車を要請した。意識は数秒で回復した。家族によると、搬入時の様子はいつもと変わらないという。既往歴 : 74 歳時に早期胃癌に対して内視鏡治療を施行。生活歴 : 喫煙は20 歳から74 歳まで20 本/日。飲酒は焼酎のお湯割りを1合/日。長男夫婦、孫1 人と4 人暮らし。家族歴 : 父親は72 歳時に胃癌で死亡。母親は78 歳時に心筋梗塞で死亡。現 症 : ベッドで臥位となっており、開眼している。難聴があるものの、大きな声で話しかけると、本日の日付や現在いる場所、自分の名前と年齢を正確に答え、医師が診察していることを理解している。身長172 cm、体重59 kg。体温35.6 ℃。心拍数56/分、整。血圧152/68mmHg。呼吸数16/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部に異常を認めない。下腿に浮腫を認めない。神経診察では指示に従って四肢を動かすことができ、明らかな麻痺は認めない。
診察中に患者は再び意識消失し、数秒後に回復した。意識消失時の心拍数は14/分、不整、血圧は90/56mmHg、呼吸数は16/分、心電図モニターの波形(別冊No. 10)を別に示す。その後家族に詳細な病歴聴取をしたところ、今回のような数秒間の意識消失を5 回以上認めていたことが明らかになった。次に行うべき治療はどれか。
- ⑴ 胸骨圧迫意識は数秒で回復し、血圧も保たれており、胸骨圧迫が必要な心停止ではありません。
- ⑵ 緊急ペーシング意識消失を繰り返す高度徐脈であり、緊急ペーシングで心拍数を確保します。
- ⑶ リドカイン静注リドカインは心室性不整脈の治療薬で、徐脈を悪化させるおそれがあり不適切です。
- ⑷ アドレナリン静注アドレナリン静注は心停止時の薬剤で、意識の回復した徐脈に対する第一選択ではありません。
- ⑸ カルディオバージョンカルディオバージョンは頻脈性不整脈の治療で、徐脈には用いません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑵です。高齢者が数秒間の意識消失を繰り返しており、意識消失時の心拍数は14/分と著しい徐脈です。心電図は本文から確認できませんが、完全房室ブロックや高度房室ブロックによるAdams-Stokes発作が考えられます。意識消失を繰り返す症候性の高度徐脈では、経皮ペーシングや経静脈的な一時ペーシングを緊急に行い、その後恒久的ペースメーカ植込みを検討します。アトロピンが効かないことも多く、ペーシングが確実な治療です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成