63 歳の男性。歩行時のふらつきを主訴に来院した。3 年前から田んぼのあぜ道を歩…
63 歳の男性。歩行時のふらつきを主訴に来院した。3 年前から田んぼのあぜ道を歩くとふらついて転ぶことが多くなった。同時期から便秘と尿失禁がみられるようになった。徐々に歩行時のふらつきが悪化し、歩行器を使うようになった。最近、書字動作がしにくくなり、物が揺れて見えるようになった。既往歴に胃潰瘍がある。家族歴に特記すべきことはない。身長164 cm、体重52 kg。体温36.3 ℃。臥位での脈拍64/分、血圧124/62mmHg。立位直後の脈拍68/分、血圧82/50mmHg。胸部と腹部とに異常を認めない。頭部単純MRI のT2 強調矢状断像(別冊No. 19A)とT2 強調水平断像(別冊No. 19B)とを別に示す。この患者で認めるのはどれか。
- ⑴ Romberg 徴候Romberg徴候は深部感覚障害で陽性となります。小脳性運動失調では開眼時から不安定で、閉眼による増悪は目立ちません。
- ⑵ 動眼神経麻痺動眼神経麻痺は多系統萎縮症の典型所見ではありません。
- ⑶ 膝踵試験拙劣小脳性運動失調により膝踵試験が拙劣となり、本例で認める所見です。
- ⑷ 手袋靴下型温痛覚障害手袋靴下型の温痛覚障害は多発ニューロパチーの所見で、多系統萎縮症では典型的ではありません。
- ⑸ 固定姿勢保持困難〈asterixis〉固定姿勢保持困難は肝性脳症などの代謝性脳症でみられ、本例には合いません。
この問題は別冊の図版(写真・図・表など)を見て答えます。図はこちらに転載していないため、下の出典のページから公式のPDFをご覧ください。解説だけでも読み取り方が分かるように書いています。
解説
正解は⑶です。進行性の歩行時ふらつき、書字障害、動揺視などの小脳症状に、便秘、尿失禁、起立性低血圧といった自律神経障害を伴い、家族歴がないことから、多系統萎縮症(小脳型)が考えられます。MRIは本文から確認できませんが、小脳・橋の萎縮や橋の十字状の高信号(hot cross bun sign)が典型です。小脳性運動失調では、膝踵試験や指鼻試験が拙劣になります。Romberg徴候は深部感覚障害による失調で陽性となる点が区別の要点です。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-01.html)を加工して作成